「人生」いいように考えることが大事です 第 1,957号

本日は、作家として活躍された
宇野千代さんのお話をご紹介します。

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「運は自分がこしらえるもの」

      宇野千代(作家)

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失恋して泣いたこともありますね。
泣かなかったように書いたこともあるけど、
それはうそ。

ただ、私は一人きりで失恋しました。

失恋した時に、よく他人に
「あんな薄情な人ってあるでしょうか」
と訴えて歩く人がいるけど、
あの方法では失恋は退治できませんね。

あの人は捨てられたんだなと笑われるのが、
関の山です。

私は自分一人で誰も見てないところで、
目も当てられないほど、わぁわぁ泣いてね。

そうして一晩中、よじって泣いている間に
体の中にあったしこりみたいなものが発散して、
ケロッと失恋の虫が落ちてしまうのよ。

そうして、お化粧して一番いい着物を着て
街へ出るの。

あのね、失恋しやしないか、失恋しやしない
かと思っていると、失恋するんです。
だから、面白いですよ。

思う通りになるんですからね。

だから、人生、いいように考えることが大事
ですね。それがもうコツですね、人生の。
人生を渡るコツです。

私の弟が船乗りでしたが、
一回でも舵をとるのをあやまって
船を衝突させたことのある人には
その船会社では二度と船の舵を
とらせなかったそうです。

また衝突しやしないか、しやしないかと思って
ると、また衝突するんですって。
これは、ほんとに真理ですね。

運が悪いとこぼす人は、私、嫌いです。
自分が運をこしらえるんだものねぇ。
自分が悪いから運が悪いの。

前向きでいつも、自分は運がいい、
運がいいと思うんですよ。
思うことですね。

結局、失恋も運が悪いのも自分がもと。
どんなにね、人から見て運が悪そうだと
しても、ああ、私は運がいいなあ、
なんて運がいいんだろうと思っているとね、
運がよくなる。

私は六十歳の時にね、
ニューヨークでものすごく感動したんです。

ニューヨークの大通りを
観光バスに乗って見物していたら、
私のすぐ近くに腰をおろしていた一人の若い
女がきれいに化粧してね、

花飾りのいっぱいついた帽子をかぶって、
満面に笑みをたたえ、見るからに
幸福でたまらないという顔をしている。

よく見ると、両手とも肩から
すっぽり切り落とされたようになっているん
です。

それなのに嬉しそうな、世にも幸福そうな顔
をして、

「私は両手とも肩からすっぽりと落ちています。
 でも、こんなによいお天気で気持ちがよいの
 に、両手がないくらいのことで、この私が、
 幸福になってはいけない、
 とでもいうことがあるでしょうか。

 人間は誰にでも幸福になる権利が
 あるんではないでしょうか」

とでも言ってるようにほほえんでいる。

あれだと、思いましたね。

私は、この時の感動をいまも忘れないですね。

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今回も最後までお読みくださり、

     ありがとうございました。感謝!

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