米国のランド研究所は、文書のなかで、中国
人民解放軍が米国の弱点を、情報やC4ISR、
ネットワークに頼りすぎていること、
複雑な後方支援作戦、帝国的な
伸延、人員被害に敏感なこと、
同盟国の前方展開基地に頼りすぎ
ていることなどと分析し、その米国の
弱点を衝くべく努力を傾注しているとしている。
現代の中国戦略は『孫子』に基づいており、
中国を安全保障上の最大の懸念としている
日本は、『孫子』の何たるかを学び、そ
の対策を構築していく必要がある。
終戦時の総理大臣を務めた鈴木貫太郎の自伝
によれば、日清・日露戦争の頃までは本家で
ある中国よりも寧ろ日本のほうに、『孫子』
が定着していたようである。彼によれば、
「日清戦争後、欧米の東洋兵学研究が
盛んとなり、逆に日本人が『孫子の
兵法』を顧みなくなった」ということである。
日清・日露戦争における指導者の戦略・情報眼
はすばらしかったが、その背景に、山鹿素行を
師と仰ぐ吉田松陰や、佐久間象山といった
幕末の兵学者が、『孫子の兵法』を明治
維新の多くの指導者たちに教えていた
という事実が、あったことを忘れてはなるまい。
剣道でも心の冷静さを失うと正しい技が出ず、
また「初太刀は面を取ってやろう」「次は
胴を狙ってやろう」と一つの打突部位
だけに拘泥することを「止心」と
言って昔から戒めている。
ひとつのことに拘泥しないバランスのとれた
心の動きを孫子は水に例え、剣道でも「明鏡
止水」(くもりのない鏡と波立たない静か
な水)とか、「平常心」として手拭い
にしたため教え諭されてきた。
日本のインテリジェンス組織の人員
および予算規模は、主要国のそれ
に比べて一桁少ない。
しかし、縦深性を持たない国家は一度攻め
込まれたら国家がなくなってしまうので、
インテリジェンスにかける人員・予算
規模は並大抵ではない。それはイス
ラエル、シンガポール、台湾など
の実態をみればすぐわかる。
中国の実質的な最高実力者であるのは、中央
軍事委員会主席である。共産党におけるラン
クからいえば、解放軍のほうが外交部より
も上に位置し発言力も強い。中央軍事
委員会のメンバーは、習近平を除い
た10名はすべて現役上将で、『孫子』
を諳んじているほど徹底的に叩き込まれ
ている『孫子』の体現者である。
日本はこうした人たちのメンタリティを
理解し対策を取らなければ、国家を存
続させていくことはできない。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!