「生き方の心得」とも言うべきものを再認識し再点検しなければならない 第 1,843 号

 100年前に書かれた新渡戸稲造の『武士道』

には、現代の日本人が忘れてしまった普遍

的思想が貫かれている。その深遠な日本

精神を、戦前日本の教養教育を受けて

育った台湾の哲人政治家が、古今東

西の哲学知識を総動員して解説。

 その李登輝が日本の現状を憂い、「指導者」

たるべきものの心構えを「ノーブレス・オブ

リージュ」をキーワードに説いた作品であ

る。テキストは、新渡戸稲造の『武士道』。

 欧米では、宗教教育なくして道徳なし

といわれるが、日本では武士道が指

導者たちの道徳規範だった。

 ノーブレス・オブリージュ。

(英語、フランス語)

 ♠高い身分に伴う義務

 ♣金持ちや身分の高いものは、そうでない

人々を助けなければならないという考え方。

 この人類史的危局の中において必要とされて

いる「日本の心」の大切さを、思い起こ

さずにはいられないのです。

 「敷島の大和心を人問はば

 朝日に匂ふ山桜花」

 これは、私が敬愛する新渡戸稲造先生の名著

『武士道』の中で改めて紹介されている本居

宣長の和歌ですが、この「大和心」こそ、

日本人が最も誇りに思うべき普遍的

真理であり、人類社会がいま直面

している危機状況を乗り切って

いくために、絶対に必要不可欠な

精神的指針なのではないでしょうか。

 一九四五年の終戦の日を境に、日本国民

の価値観は一八〇度変わりました。

 また、台湾も五十年の長い「日本統治時代」

に別れを告げることとなったのです。

 しかし、私自身、日本の教育で生まれ育って

きましたから、その価値観は骨の髄

まで染みこんでいます。

 いや、戦前の日本の高度な教育が、いまの

私の思想・知識の基礎になったことは

疑うべくもありません。

 私が少年時代に日本語で読み親しんだ日本

の名作の中でも、新渡戸稲造先生の『武士

道』は、とくにその後の人生に大きな

影響を与えています。

 私が初めて『武士道』という本に出会った

のは旧制の台北高等学校のころですが、最

も尊敬する新渡戸稲造先生の生き方とも

相侯って、まさに雷に打たれたような

衝撃を受けたものです。

 本書の中で、私は繰り返し繰り返し「いま、

なぜ武士道か」という問題を、日本および

日本人に対してだけではなく、私自身

に対しても問いかけています。

 それは、このような危急存亡の秋にこそ一人

一人の社会の成員が「生き方の心得」とも言

うべきものを再認識し再点検しなければ

ならない、と固く信じているからにほかなりません。

 この大命題を自他ともに厳しく問い詰め

なければ、とても国家や国民の未来は見

えてこない、と確信しているからこそです。

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 今回も最後までお読みくださり、

    ありがとうございました。感謝!

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