神武東征に十六年の歳月を要したのはなぜか?
第十代の崇神天皇がハツクニシラス(初めて国
を開いた)と言われる理由。なぜ継体天皇の
「古志国の大王」だった事実が軽視されたのか?
スサノオ、大国主命、神武天皇、崇神天皇、
ヤマトタケル、神功皇后、雄略天皇の七人
の英雄の伝承地を辿って見えた『古事記』の実像!
著者は「日本学生新聞」編集長などを経て「も
う一つの資源戦争」(講談社)で論壇へ。以後、
作家、評論家として多彩な執筆活動を続
ける。中国問題、国際経済にも詳しい。
神話、古代史でも現地踏査を重視した『こう
読み直せ! 日本の歴史』(ワック)、『一万年
の平和、日本の代償』『神武天皇以前
縄文中期に天皇制の原型が誕生し
た』(ともに育鵬社)、『真説・
歴史紀行 日本のパワー・
スポットを往く』(海竜社)、『明智光秀
五百年の孤独』(徳間書店)などがある。
日本の国の始まりは神々の誕生である。人間は
神の分霊であり、『古事記』は上中下の三巻に
分かれて神代は上巻に凝集されている。
ずらりと神々の御名が並び、夥しい地名があり、
しかも大和言葉なので現代人にはかえって覚え
にくい懼れがある。けれども全体にリズミ
カルである。
『古事記』は日本人の魂を謳った長大な詩である。
日本語の成立には少なくとも二千年の時間が
必要だから、口伝による伝説の継承はそれ
だけ長く続いた。
時間的スパンで言えば縄文時代の中期から
伝承された物語が、『古事記』の基幹を
形成したとみてよい。
天孫降臨の前の神代は数千年の時間が流れた
と考えられるのはホモサピエンスの誕生から
の歴史を考察すれば納得できる。
まことに物語は浪漫に満ち満ちている。
『古事記』は『日本書紀』とは異なってイデ
オロギー色は希薄であり天皇の正統性を美化
するような工夫はされていない。醜聞も
艶聞も恋歌も三角関係も惨劇も抑制
なく描いているのである。
とくに英雄色を好むの格言通り、次々と美女と
結ばれる天衣無縫の歴代天皇に、嫉妬する
正妻たちのなまなましい苛立ちぶりも
遠慮なく表現されている。
『古事記』に描かれた現場に立つと、なんだか
古代の風に吹かれて神秘の霊域に浸っている
ような錯覚にとらわれる。筆者が各地で
した経験である。
宮崎 正弘 (著)『歩いてみて解けた古事記の謎』
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!