『致知』の連載でお馴染みの鈴木秀子さんは、
シスターとしてこれまで多くの悩める人たち
の声に耳を傾けてこられました。
本日は傾聴の大切さについて
エピソードを交えつつ語られた
5月号の連載「人生を照らす言葉」
の一部を掲載します。
★『致知』最新号「命いっぱいに生きる」。
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(鈴木)
日本のカトリック系大学で教鞭を執ったある神父
の伝記に、こういうことが書かれてあります。
この神父は、大勢のグループを相手に神様の話を
していました。するといつも最前列、中央の席
に座って肯きながら熱心に聴いている高齢の
女性の姿が目に留まりました。
神父はいつもその女性の姿に励まされるように
講演をしていました。
ある時、講演会の主催者に「あの女性のおかげ
で私は話し続けることができました。あの方は
どういう人なのですか」と質問したところ、
「あの女性は全く耳が聞こえないんです。
じっと顔を見ているだけなんですよ」
という答えが返ってきて、神父は大変驚いた
といいます。
その高齢の女性が手話を通して言うには「私は
耳は聞こえないけれども、じっと相手の顔を見
ていれば、その人が言っていることが真実か
どうかがよく分かります。だから、神父さんの
話を信じる気持ちになったんです」と。
これを聞いた神父は「ああ、この女性の心の
美しさによって自分の心もまた美しくされた」
と心打たれたというのです。
私がかつてアメリカでアクティブ・リスニング
(傾聴)の大切さを学んでいた時にも、似た
ような話がありました。
講演の名手と呼ばれる男性がいて、ある人が「ど
うしてそんなに上手に話せるのですか」と質問
しました。
彼はもともと話し下手で、人前でスピーチを
することは苦手でした。
しかし、後ろのほうでいつもこちらを見ながら
熱心に聴いてくれている人がいることに気づい
て、その人だけを意識して話をするうちに、
いつしか話力が身についてきたのだといいます。
そして彼もまた、熱心に話に耳を傾けてくれて
いたその人が耳が不自由であることを後で
知るのです。
この2つの実話から分かるように、
人の話を熱心に聴くことは、
その人の中の「ほんとうに美しいもの」を
引き出す不思議な力があります。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!