いつも見守ってくださる大いなるものが存在していると思う 第1,026号

 国民教育の師父・森信三氏、京都大学元

総長・平澤興氏、仏教詩人・坂村真民氏。

 それぞれを親に持つお三方が、いまも

多くの人々の人生を照らす言葉を

取り上げました。

────────────────

 森 迪彦(森 信三氏 ご子息)
     ×
 平澤 裕(平澤 興氏 ご子息)
     ×
 西澤真美子(坂村真民氏 ご息女)

────────────────

【平澤】
 この辺で父の遺した言葉についても触れ

ておきたいと思いますが、私が父の言葉

で心に残っているものをまず挙げると、

『平澤興一日一言』(致知出版社)

の5月15日の言葉です。

 「私が私の一生で最も力を注いだのは、

何としても自分との約束だけは

守るということでした。

 みずからとの約束を守り、己を欺かな

ければ、人生は必ずなるようになる

と信じて疑いませぬ」たとえ自

分でこうしようと決めたこと

を守らなかったとしても、

他人には分かりません。

 咎められることもなければ、信頼

を失うこともありません。

 しかし、他人が見ていなくても天は

見ていますし、何より自分自身が

それを見ている。

 自分との約束を破る人は自分に負けて

いる人であって、それでは成長は

止まってしまうということでしょうね。

【西澤】
 本当にそのとおりですね。

【平澤】
 ただ、単純なようで、これを徹底して実

践するのはなかなか難しいものです。

 次に1月31日の言葉。「人は単に年を

とるだけではいけない。どこまでも

成長しなければならぬ」

 私も75歳になって、気持ちが枯れそうに

なることもありますけど、年を取って

も自分に負けてはいけない。

 いつまで経っても燃えて生き

なければならない。

 そう喝を入れてもらっているんですよ。

【森】
 私の父も「人間は進歩か退歩かの何れか

であって、その中間はない。現状維持

と思うのは、じつは退歩している

証拠である」と言っています

ので、心したいですね。

【平澤】
 それと、最後は9月24日に載っている

次の言葉です。「自分の力で生きて

いるなどと、おこがましいこと

を考えません。毎朝、目を

さましたとき生きている

ことの不思議さを感じ、

それを喜ぶのです」

 私は10数年前、父と同じで大腸がん

の手術をしたんですね。

 そういうこともあり、この年になって

つくづく思うのは、当たり前という

のは実は大変ありがたいことなんだと。

 たくさんの目に見えないものの

働きのおかげで命がある。

 そういう生きる喜びと感謝を深いとこ

ろで感じ、日々を営んでいくこと

が大切だと思っています。

【西澤】
 ものすごくよく分かります。私が好きな

父の詩に、「影あり/仰げば/月あり」

というのがあるんです。

 『坂村真民一日一言』(致知出版社)

の9月23日なんですが、この詩に

深く感じ入ったのは母の介護

をしていた時でした。

 ある日、介護で夜中まで起きていて、

深夜3時頃に、少し寝ようかと思っ

て部屋の電気を消すと、お月様

の光が部屋の奥までサーッと

差し込んでいたのです。

 外に飛び出して空を仰ぎますと月が輝い

ている。そうしたら、必ず手が合わさる、

自然に。ありがたいなぁって。でも、

電気をつけていた時は気がつかなかった。

 同じように、この世界には私たちのこと

をいつも見守ってくださる大いなるもの

が存在していると思うのですが、多く

の場合、人はそれに気づかない。

 気づくと感謝の念が湧き起こりますよね。

『致知』2018年6月号【最新号】

     特集「父と子」P10

今回も最後までお読みくださり、

    ありがとうございました。感謝

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