おにぎり一個のほうがうれしい 第 2,569 号

子守歌の伝承・普及に取り組む
日本子守歌協会理事長・西舘好子さんが
紹介された一篇の詩。「僕の声を聞いて」。
それは母親から虐待を受けている少年が
悲痛な思いを綴ったものでした。

誰もが胸を痛めないではいられない詩の内容を、
西舘さんの思いと共にお届けします。

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僕の声を聞いて

「おかあさん 
ぶってもけってもかまわないから 
僕を嫌いにならないで。
おかあさん 
おねがいだから僕の目をちゃんと見て。
おかあさん  おまえを 
生まなければよかったなんていわないで 
僕は今ちゃんと生きているんだから。

おかあさん 
優しくなくてもいいから、僕に触って。
おかあさん 
赤ちゃんの時抱いてくれたように抱いて。
おかあさん 
僕の話にうなずいてくれないかなあ。
つらい、悲しい、もうダメ、
お母さんの言葉ってそれしかないの。

赤い爪魔女みたい、ゴム手袋のお台所、
お部屋のあちこちにある化粧品、
僕の家のお母さんのにおい、
僕の入れない世界で満ちている。
おかあさん お母さんの匂いが欲しい、
優しい懐かしいにおいが。
 
おかあさん 
お願いだから手をつなごう、
僕より先に歩いて行かないで。
おかあさん 
お願いだから一緒に歌おう、
カラオケ屋じゃないよお家でだよ。
おかあさん 500円玉おいてくれるより、
おにぎり一個のほうがうれしいのに。
 
おかあさん 
笑わなくなったね、
僕一日何度おかあさんが笑うか
ノートにつけているの」
 
(西舘)

母親から虐待を受けている少年の
悲痛な思いを綴った文章です。
私が小さい頃にはなかったことですけど、
親が我が子に暴力を振るい、
時に死に至らしめてしまう痛ましい事件が、
近頃は日常茶飯事になりました。
 
親の愛情というのは、
子どもにとって絶対的なものでしょう。
それがいま、根底から揺らぎ始めています。

いまの親というのは、家庭で父親はどうある
べきか、母親の役割は何かということが
分からなくなっている。

父、母という言葉の重みがなくなって、
家庭が喪失してしまっているんですね。

特に、子育てに直接関わる母親の力が
家庭から失われてしまったことが、
こうした事件が頻発する根源じゃないかと
思っています。
 
(中略)

虐待を受けた子たちの施設に行くと
よく分かるんですけど、いまの親は子どもの
抱き方も知らないの。まだ首も据わって
いないうちから変な抱き方をされて、
骨折してしまった子もいるんですよ。
 
子育てって上の代から伝承されていく
ものだし、家庭は本来人間の基本を養う
大切な教育の場だったと思うんです。
でも残念ながら、いまはそれを担える家庭が
少なくなっているんじゃないでしょうか。

(本記事は月刊『致知』2020年5月号の
特集記事の一部を抜粋・編集したものです)


この社会は悲しい事件で満ち溢れていますが、
『致知』を通して社会の一隅を照らしていきたい
というのが私たちの願いです。

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  今回も最後までお読みくださり、

      ありがとうございました。感謝!

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