掴み所のない人
本当にわかっている者なら、多くは語らない。
わかっちゃいないヤツほど口数が多いのさ。
タオを生きてる人間なら、無駄に口を開かない。
口どころか、目も耳も、無駄には使わない。
ただ飄々と、己の心のトゲを抜き、こんがら
がった心のもつれを解き、気づきと調和し
ながら、塵舞う世間に混じっている。
大きな国を治めるなら、小魚を煮るときのよう
に、いたずらにかき回さないことだ。つつく
ほどに、形が崩れてしまうからね。
へりくだる力
大国は、大河の下流。すべての流れが交わる
そこは、世界中が慕う女性のようなもの。
いつの時代も、男が女性に敵わない
理由は、女性が、じっと静かに下手に出るからだ。
大国だからこそ、ものごし静かに小国にへり
くだって接することだ。そうすれば、小国
からの信頼が得られる。そしてまた、
小国の側もへりくだって大国に
接すれば、大国の信頼を
得ることができる。
ゆえに、知識に頼って国を治めようとすれば、
災いを招く。頭は物事を複雑にし、ハートは
物事をシンプルにする。知識に頼らず国
を治めるなら、幸福は訪れる。
深い慈愛がある人は守りが固く、負けること
がない。それは、天もまた慈愛をもって
守護してくれるからだ。
優れた武士は威圧しない。秀でた戦士
は怒らない。よく勝つ者は争わない。
上手に人を使える人は、へりくだることがで
きる。これが争わず、人の力を用いる「天の
采配」。いにしえから伝わるタオの極意だ。
究極の兵法
兵法に、こんな言葉がある。「戦は先に仕掛け
ず、受け身の立場を取れ。一歩進もうとする
より、一歩後退せよ」と。無い部隊を進め、
無い拳を振り上げ、無い武器を身につける。
こちらからは喧嘩は売らない。それよりも、相
手が、何を恐れているのかに目を向けるんだ。
師匠は水
この世に、水ほど柔らかくしなやかなものは
ない。しかし、堅くて強いものを攻めるのに、
水に勝るものはない。水に代わるものがない。
しなやかなものが強いものに勝ち、柔らかい
ものが堅いものに勝つ。世間の人もよく知っ
ていることだけど、実行できる人は少ないね。
黒澤一樹『超訳「老子道徳経」
東洋哲学の原点』
の詳細,amazon購入はこちら↓
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!