心を積極的観念で満たし、
人生を好転させていく
独自の方法を説いた哲人・中村天風。
その教えはいまも経営者やアスリートなど、
分野を問わず多くの人に影響を与え続けて
います。
上智大学名誉教授の渡部昇一さん(故人)
は、ストレスについて探究していく中で、
天風氏が呼吸の調整によって
心身の健康を保っていたことに気づかれます。
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〈渡部〉
天風氏は約半世紀前、
80歳を越えた頃から精力的に
講演活動を展開しました。
その頃、日本に入ってきた医学の学説に
カナダ人生理学者の
ハンス・セリエのストレス学説があります。
心の状態が肉体に影響を及ぼすという、
いわば当たり前のことを医学的に証明したもの
ですが、だからストレスはすべて避けなくては
ならない、というのがセリエの主張でした。
このストレスの問題について、
さらに明快な答えを示してくれたのが
『人間 この未知なるもの』を著した
世界的生理学者アレキシス・カレルです。
カレルは現在の医学の学説が病人のデータ
のみに基づいていることに疑念を呈しました。
例えば、足の悪い人に駆け足をさせれば
当然マイナスの効果しか生じません。
しかし、正常に機能する人は
負荷を与えるほど足の筋力は強化され、
走る能力が向上します。
受験勉強でも、そのプレッシャーから
神経衰弱になる人もいれば、
この試練を成長のバネにする人もいます。
健全な人にとってストレスは
むしろ必要であるというのが
カレルの教訓であり、私もまったく同感です。
興味深いのは、
天風氏もまたストレスと向き合い、
それを乗り越える方法を説いている点です。
これはクンバハカ法と呼ばれる、
いわばヨガの秘伝。
具体的には、平常心を失うような
衝撃や感覚の刺激を受けた場合、
まず第一に肛門を締め、
同時に肩の力を抜いて
下腹部に力を充実させるというものです。
天風氏は「溺れて死ぬ人は皆肛門が開いて
いる」といった表現で、日々意識して
肛門を締めるよう言っていますが、
自律神経を調整する上で
それくらいこれは大切なことなのでしょう。
このクンバハカと同じような
呼吸法(正心調息法)を独自に開発、
体得されたのが医学博士の塩谷信男氏でした。
私も『致知』で対談し、
共著も出させていただきましたが、
塩谷氏は子供の頃、大変病弱だったようです。
しかし、この正心調息法で健康を手にし、
105歳の長寿を全うされるのです。
※本記事は月刊『致知』
2011年11月号 特集「人生は心一つの置き
どころ」から一部抜粋・編集したものです
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!