もし皆に温かい家庭があったなら.戦争にはならなかったかもしれない 第 452号

 NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」も10月1日

で終わりました。

 今回はそのモデルとなった大橋鎮子さんが90歳の

時に『致知』にご登場いただいた時のインタビュー

の一部を紹介します。

 ドラマの様子を思い浮かべながらお読みください。

────────[今日の注目の人]───

☆ 『暮らしの手帖』とともに60余年 ☆

大橋鎮子(暮らしの手帖社社主)

───────────────────

──大橋さんは、女性編集者の草分け的存在

でもありますね。

 元々は編集者になるつもりなんて全然なかったん

ですが、お金儲けをする必要がありましてね。

 終戦直後、東京一帯が焼け野原になって、洋裁を

やろうかとか、喫茶店をやろうかとか、

いろいろ考えたんですけどね。

 そういう仕事では、そんなに多くのお金を

得るわけにいかない。

 なぜお金にこだわったかというと、私は

10歳の時に父を亡くしているんです。

 父は今際(いまわ)の際に私を枕元に呼んで

「……鎭子は一番大きいのだから、お母さんと

妹二人の面倒をみてあげなさい」と言い、

その言葉がずっと頭にありました。

 母もその遺志を受けて、まだ小学校五年の

私に父のお葬式の喪主をやらせ、

挨拶も務めさせました。

 その後も何かにつけて私を立てて

くれましてね。

 だから私、いつでも自分で何かを考えて、

ちゃんとやっていかなければという

気持ちがありました。

──幼くして自立心が培われていったんですね。

 それで昭和16年に、日本読書新聞が求人

広告を出していたので、そこで働く

ことになりました。

 戦争が激しくなると、一時休刊になりましたが、

終戦後に復刊してある程度のメドがついた

ところで、私は編集長の田所太郎さん

に相談をしたんです。

 「私は家庭がこういう事情で、母を早く楽に

させてあげたいし、お世話になった祖父

にも恩返しをしたい。

 でも普通の勤め人では十分な収入が得られ

ませんから、自分で雑誌を出したいと

思うんです」すると田所さんが

「だったら、いまここに見えてる花森(安治)さんは

力のある人だから、一度話をしてみるといい」

と言って私のことを紹介してくださったんです。

──偶然そこにいらしたのですね。

 そう。だからいまでも思うんだけど

物事はタイミングね。

 話をしたのが一日でもずれていたら花森さんは

いなかったんですから。

──それでどんな話をされました。

 「私は戦争中の女学生ですから、ろくに勉強も

しておらず、何も知りません。

ですから、私の知らないことや知りたいことを

調べて出版したら私の年より上へ5年、

下へ5年、合わせて10年間くらいの

世代の人が読者になってくださると思います

と伝えました。

 花森さんは「僕は残念ながら母親に孝行でき

なかったから、君のお母さんへの孝行を

手伝ってあげよう。

 ただし、雑誌の内容に関しては私の意見を

聞いてほしい」と言われました。

 そして「日本が軍国主義一色になり、国民が戦争に

突っ込んでいったのも、一人ひとりが自分の暮らし

を大切にしなかったからだと思う。

 もし皆に温かい家庭があったなら、戦争には

ならなかったかもしれない。

 もう二度と、こんな恐ろしい戦争をしない世の中に

していくための雑誌を作りたい」と話されました。

──取っ掛かりは大橋さんからの

お話だったのですね。

 花森さんは「出版をやるんだったら銀座でなきゃ

ダメだ」と言われ、昭和21年に銀座のビルを

借りて『スタイルブック』という雑誌を

作ることにしました。

 でも考えてみると、花森さんも私も事業の資金

なんて持っていない。

 そんな時、私の妹が勤めていた保険会社の

流山地区(千葉県)をまとめておられた方が

「大橋さんのお姉さんが事業をなさる

と聞きました。これをお使いください」

と、2万円を預かってこられたんです。

いまのお金にしたら4、500万円くらいで

しょうか。

いや、もっと多かったかもしれません。

 花森さんは「これがあれば思う存分、仕事が

できる。 地獄で仏にあったようだ」

と喜ばれ、会社という組織上、

言い出しっぺの私が社長になりました。

※『致知』ではこれまでドラマや小説のモデル

となった多くの人たちを誌面で

紹介してきました。

 まだお読みでないかたは、この機会に

ぜひお読みください。

 『致知』2016年11月号 

        連載 「生涯現役」P106

  

 今回も最後までお読みくださり、ありがとう

              ございました。感謝!

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