神山には全国的に有名な観光スポットはない。
自然環境や景観にしても、神山程度のところ
はごまんとある。企業誘致に力を入れて
いる自治体も枚挙にいとまがない。
それなのに、なぜここにエンジニアやクリ
エイターが集まるのか。ひとつは抜群の
IT環境だ。その町並みからは想像でき
ないが、神山は全国でも屈指の
通信インフラを誇る。
それに、リフォームが必要な古民家は少なく
ないが、家賃は月3万円前後と都会に比べれ
ば圧倒的に安い。徳島市内まで40~50分
と利便性も悪くない。場所を問わない
働き方を模索している企業やビジネ
スパーソンにとって、神山は
極めて都合がいい。
ヤフーやグーグルなど大企業の社員が短期滞在
で訪れることもしばしばで、空き家として放置
されていた古民家が続々と姿を変えている。
その動きはオフィスだけではない。移住者の
増加に伴って、店舗や施設のオープンも相次
いでいる。ここ数年を見ても、パン屋や
カフェ、歯医者、パスタ店、図書館な
どが神山MAPに登場した。アーティ
ストやクリエイターなどクリエイ
ティブな人材の移住も進んでおり、
まさに町が新しく生まれ変わっている印象だ。
鮎喰川の畔に広がる人口6,100人ほどの町、
神山。徳島市内から40分の距離だが、平地
が少なく、急峻な斜面にへばりつくよう
な集落が点在している。
かつては林業で一時代を築いたが、木材価格
の低迷とともに人口は減少の一途をたどる。
高齢化率も46%と、少子化と高齢化に
悩み苦しむ中山間の典型のような地域だ。
ところが、神山はITベンチャーの「移転
ラッシュ」に沸いている。名刺管理サー
ビスを提供しているSansanが、
2010年にサテライトオフィス
「神山ラボ」を開設したのを
皮切りに、9社のベンチャー企業が
古民家を借りた。
篠原匡『神山プロジェクト:未来の
働き方を実験する』
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!