「政治的、軍事的観点からも海が『生き物』
であることがわかる。海を制する国家
の内在的論理が見えてくる」
中国・北朝鮮への対応、そして日本の針路
とは?NATO軍最高司令官を務めた米海軍
提督が語る「21世紀の海洋戦略」。
世界の海洋を長年支配してきたイギリス
海軍は、水路が互いに結びついてい
ることをよく理解していた。
「海はひとつ」というイギリス人がよく使う
言い回しをはじめて聞いたのは、18歳の
ときだ。アナポリスの海軍兵学校の
2年生で、士官候補生として学んでいた。
航海術の教官はイギリス人少佐であり30代
半ばのはずなのに年老いて見えた。『老人
の海』の主人公さながらに六分儀、航海
暦、潮汐表を自在に駆使していた。
駆逐艦を操縦するための知識や手法のほか、
海洋学、海運史、世界戦略などを教わった。
海軍に入ってからは海で過ごすことが多か
った。すべての海洋を渡り、英国人の教官
から学んだことを検証し、航海術や艦を
扱う技能を向上させ、部下を海の上
で率いる経験もした。
その後、国際関係学の専門大学院である
フレッチャー・スクールで博士号を得た
ことで、国際社会に対する認識は一層
深まり、海が地政学に及ぼす影響
を理解するようになった。
驚くことに、スエズ運河は、古代の海、文明、
敵と味方を結びつける力の象徴である。19世
紀にはイギリスの利益に不可欠な場所にな
り、インド独立後、英国軍が「アデンの
東」から撤退した1960年代後半まで、
基本的には変わらなかった。
交易の戦略的重要性は、19世紀に入っても
続いた。コーヒーと香辛料に加え、砂糖、
綿花、紅茶、ゴムがヨーロッパに運
ばれ、利益は産業革命の基盤となった。
♠最古の海戦の舞台。
人類が本格的に海で戦い始めたのは、
地中海においてである。
何世紀もの間、地中海の大海原を行き来し
ていた船乗りは、海で戦うことを思
いつき、実行し始めた。
記録に残る西洋史のはじめから、地中海は
ある程度限定された空間での共有資産と
して機能してきた。交易路、タンパ
ク質の補給源、輸送の場、手近
な戦場、天然の障壁として
の役割を果たしてきたのである。
ジブラルタル海峡を渡るとき、海軍の軍人は、
古代の戦場にやって来たかのように感じる。
四方を取り囲まれ、取り残されたよう
な感覚は、船乗りにとってうれし
いものではない。
♣戦略拠点としての台湾。
地中海のシチリア島と同じように、台湾は
戦略的拠点であり、住民は何度も戦争
の矢面に立たされてきた。
海軍士官としてこの港を歩くと、この島が
どれほど戦略的に重要であるかがわかる。
朝鮮半島、日本、中国、さらには南
のすべての国との海上交通路を
横切る位置にあり、南シナ
海のストッパーとして
働く。マハンなら、ここに国旗を立て、
給炭基地を建設すべしと主張しただろう。
アメリカによる継続的な関与は、
大きな意味を持つ。
本書は回顧録であるとともに、アメリカ
の大戦略を提案した政策文書とも
いえる興味深いものだ。
ジェイムズ・スタヴリディス『海の地政学:
海軍提督が語る歴史と戦略』
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!