英国情報組織の生成発展のドラマを描
きながら、能力と魅力あふれるスパイ、
二重スパイたちの活動を、二度の
世界大戦とロシア革命期を中心に活写。
暗号解読のスリリングな
事情などに記述は及ぶ。
本書はまさに、特異な20世紀
裏面史といえるだろう。
歴史上、イギリスは、自国が関与した戦争
や厳しい対外問題において、紆余曲折を
経て終結したときには、抜け目なく
自国の利益を確保していた点が興味深い。
1588年、スペイン国王フェリペ2世は、
エリザベス女王のイングランドへの膺
懲を完遂するため、130隻からなる
大艦隊の遠征に踏み切った。
海戦は10日ほどであったが、
スペインは敗北した。
イングランド側は、スペイン艦隊を無敵
艦隊と呼び、「無敵艦隊撃退」を自国
の自信と矜持のシンボルとする
ようになった。
実はこの国難に際して、イングランド
の「秘密情報部の父」といわれた
サー・フランシス・ウォルシ
ンガムが、大陸に亡命中
に自ら構築した個人的
なスパイネットワークを
活用して、ヨーロッパ列強
の宮廷、ローマ教皇庁、さらに
スペイン宮廷からも情報を集め、
スパイン側の動静をつかんでいた。
事態にうまく対処することができ
たのもこれが一因である。
諜報業務にあたってそのウォルシンガム
は、イングランドの世界戦略を担う海外
秘密部員について、「紳士だからこそ、
汚い仕事に手を染めることができ
る」と言い切っている。
ウォルシンガムを先達とする伝統は、連綿
と続いたわけではないが、戦時となれば、
イギリス流の経験論が底流となり、
彼のやり方がスパイ組織の再興・
構築・維持に大いに寄与した
のは、的外れではない。
戦争に明け暮れた20世紀においてイギ
リスは、ヨーロッパ列強のなかで2回
の世界大戦に敗北しなかった唯一の国だ。
世界大戦という、国家存亡に関わる危機
のときに、かつてのウォルシンガムの
「箴言」を体現し、実践する後継
者的人物と組織が、密かに
活動していたのだ。
「スパイは世界で2番目に古い職業で
ある」スパイの歴史は人類の歴史と
ほぼ同じと考えて差し支えない。
こうした経緯を引き継いで、欧州でスパ
イ活動をとりわけ重視したのが
イギリスである。
ウォルシンガムは、イギリスがスペイン
の無敵艦隊を撃退したのちにも、国内
の諜報網や海外のスパイネット
ワーク維持のために費用を投じていた。
「いかなる情報にも金がかかりすぎる
ことはない」という信念からである。
彼は女王に情報機関の重要性を進言
したが、女王は彼に財政的な支援
を一切、行わなかった。
スパイであれ、インテリジェンス・
エージェントであれ、結局は
人材である。
英国の伝統的なリクルート方法は、
それなりに成功していた。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝