スペイン帝国は中世から現代まで数知れぬ歴史的事件が渦巻いた 第 909 号

 キリスト教国の雄スペインは、カス

ティーリャ、アラゴン両王国の

婚姻により成立した。

 8世紀以来イベリア半島を支配した

イスラム勢力を駆逐し、1492年、

レコンキスタを完了。

 余勢を駆って海外へ雄飛し、広大な領土

を得て、「太陽の没することなき帝国」

の名をほしいままにする。

 国土回復戦争の時代から、オスマン・

トルコとの死闘を制して絶頂を極め、

宿敵イギリスに敗れて斜陽の途

をたどるまでを流麗な筆致で描く。

 スペインといえばとかく太陽と情熱の国

と思われがちだが、はたしてそうだろうか。

 スペインの人々はみんな陽気で底抜け

に明るいと耳にするが、これは誤解

ではないだろうか。

 スペインにだってフラメンコの狂騒など

蚊トンボの羽音ほどにも感じない

人々は山ほどいる。

 「ピレネー山脈を越えるとそこはアフ

リカ」と穿った言葉を吐いたのは

誰であったか。

 ともあれスペインはその昔、太陽の

没することなき大帝国であった。

 しかも中世の時代から濃密な霧は変わる

ことなくスペインに立ち込め、その厚い

垂れ幕の向こうをさまざまな歴史

絵巻が走馬灯のように流れていった。

 16世紀ともなれば、朝霧の晴れたレパ

ントの海に熾烈な戦いを繰り広げる

ガレー船の大群が見える。

 その甲板には火縄銃をぶっ放す

セルバンテスの姿があった。

 もちろん不朽の名著『ドン・キホーテ』

を世に出す以前の若き雄姿である。

 英国でシェイクスピアが活躍していた

時期、セルバンテスが「自然の怪物」

と称して、畏敬することになる

スペイン随一の劇作家である。

 そして、20世紀、「現代のスペイン」

では国民どうしが敵味方に分かれて

銃を取る内戦が勃発する。

 いずれも太陽の没することなき大帝国

スペインに去来した大事件だ。

 かつてはヨーロッパに君臨し、遠く

日本にまで支配権を伸ばそうとした

ほどの国力を誇ったスペイン帝国

であることを思えば、中世から

黄金時代を経てやがて現代に、

至るまで数知れぬ歴史的

事件が渦巻いたのはいうまでもない。

 移民者労働局が調査した数値によると、

現在スペインに住むヨーロッパ以外

からの移民は、60万に達する。

 フラメンコと闘牛と太陽の、

情熱の国スペイン。

 明日のことなど思い煩うことなく、

今日を楽しんでフラメンコを踊り、

闘牛で牛を殺して熱狂し、太陽

を燦々と浴びて情熱をほとば

させ、そして昼寝をする民族。

 このような能天気な観光ポスター的

標語はもういい加減に破り捨て

なければならない。

 スペイン人はそれほど

気楽な人たちではない。

 もっと真摯で寡黙、そして

働き者である。

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今回も最後までお読みくださり、

    ありがとうございました。感謝

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