ユーロ危機を招いたギリシャ支援における頑なな
姿勢、ロシアや中国への接近と米国離れ、学者や
メディアの誤解に基づく日本批判――
EUのリーダーであり、GDP世界第4位の大国が、
世界にとって、そして日本にとって、最大の
リスクになりつつある。
ドイツは変質したのか? それとも、ドイツに内在
していた何かが噴き出したのか?長年ドイツで取材
活動を行ってきた筆者は、「夢見る人」という
ドイツとドイツ人に対する定義が、この
問題を解く鍵になるという。
エネルギー転換、ユーロ危機、ロシア・中国という
二つの東方世界への接近――この三つのテーマから、
ドイツの危うさの正体を突き止め、根強い「ドイツ
見習え論」に警鐘を鳴らす。
ロマン主義的政治観に対比されるのが、単純化して
言えば、政治とは退屈に耐えて行う日常的な利害の
調整の技術であり、特段、壮大な理念を実現する
プロセスではないとする考え方だろう。
こうした英国流の冷めた見方は、とてもドイツ人
には耐えられないらしい。
メディアのあり方についても、アングロサクソン
世界の報道に、成熟した情報の扱い方がある
ことはこれまで見た通りである。
アングロサクソン的情報収集、分析は、世界帝国と
して鍛えられ、海洋国家ならではの地球的な目配り
と、バランス感覚に裏付けされたものだ。
そしておそらく、何か大事に直面したときの危機
管理において、観念的な認識に縛られるドイツ的な
知性よりも、アングロサクソン的な経験論的な
知性の方が優れている。
躊躇しながらもヨーロッパを牽引する存在となった
ドイツが、その「夢見る」性格によって、再び世界
的な波乱を引き起こすことがあるのだろうか。
大陸国家同士の相性の良さ。
ドイツとロシアの関係ばかりでなく、ドイツと中国の
関係においても、経済的利益、政治的打算に止まらない、
感覚的に肌が合う、といった言葉がふさわしいような、
共通の波長があるのではないか。
域内のユーロ危機対策に忙殺されてきたヨーロッパ、
なかんずくドイツが忘れかけていた、国家間の関係
という国際社会を律する基本原理が、ロシアの
プーチン大統領によるクリミア半島併合で、
亡霊のように姿を現した。
この危機に際し、ドイツ人自身にとっても驚きだった
のは、プーチン大統領の行動に理解を示す言論が、
ドイツ国内に横行したことである。
自らを「シビリアンパワー」と任じ、平和的な国際紛争
解決を旨としてきたはずのドイツ人の多くが、国際法
秩序より歴史を根拠に、武力行使をためらわない
プーチンの論理と行動に共感を覚えた。
そこには「東方への夢」と、先祖返りのように蘇った
ドイツのユーラシア大陸国家としての性格が映し
出されているのではないか。
危機のときにこそ、物事の本質が現れる。
三好範英
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