一生懸命に子どもの背中や胸をさすってあげてください 第 2,554 号

 整体(あるいは医療)と呼ばれる治療の本質

は、子どもが苦しさを訴えたときに思わず

その苦しいところに手をあて、温めたり

さすったりする母親の「手当て」と

いう行にあるのだろうと、私は

プロの治療者として、その

ことを確信しています。

 これは日本古来の民間療法として大事に

されてきた「手当て」ともつながります。

 また、「痛み」は、危険を知らせるだけでなく、

自然治癒力が働く身体が出しているサイン

気づく脳と身体をつくる上でもとても

大切な役割を果たします。

 それに痛みという信号が脳に送られなくなる

と脳は、もう治ったと判断しますから、自然

治癒力の働きにストップをかけてしまいます。

 風邪をひいて熱が出るというのも、自然治癒力

が働いているからこその現象です。自然治癒力

は、実は、脳の働きと密接な関係があります。

脳が、ホルモンの分泌や自律神経の調整を

はかり、ホルモンや自律神経が正常に

働くことで、〈自然治癒力〉の働きも高まります。

 子どもが喘息で苦しんでいるとします。母親

は無意識に、子どもの背中や胸をさすって

あげているはずです。気持ちを込めて、

できることなら代わってあげたい

と思いながら、背中や胸に手を

当てて、さすります。

 子どもは、苦しい中でお母さんのやさしい

手の温もりを感じます。それで安心し、

症状も収まるのです。

 一生懸命に子どもの背中や胸をさすってあげて

ください。これがセルフケアの重要な基本です。

 脳脊髄液というのが、体内の異変を素早く

キャッチし、自然治癒力を発動させるのに、

とても重要な働きをしています。脳脊髄

液が正常なら、敏感で回復力のある

身体でいられるといっても過言

ではありません。

 脳脊髄液がやることは、一つには、内臓や

筋肉、神経に栄養を運び、老廃物を回収

すること。もう一つが、身体のどこか

に損傷があれば、それを治す

いうことです。

 脳脊髄液の流れが悪くなると、脳が圧迫されて

頭痛がしたりして、吐き気やめまい、視力の

低下、耳鳴りといった症状が出ることが

あります。また、自律神経の乱れも出ます。

 「手当て」のやり方は、簡単も簡単。痛い

ところ、違和感のあるところに手を

当てるだけです。

 深い呼吸をしたときに、頭蓋骨や仙骨は一番よく

動きます。すると、脳脊髄液の流れも良くなり

ます。つまり、意識して深呼吸をすること

で、体調は良くなるのです。

 セルフケアは家族とあなたを守る

「最高の予防治療」なり。

 触れることで痛みが軽減したりして、アルツ

ハイマーの人の徘徊や暴力行為が減少する

ことが報告されています。

 手を当てることの大切さは、医学的にも見直さ

れてきています。手を当てたり、マッサージ

をすることで、大脳が刺激されて、オキ

シトシンとかエンドルフィン、セロト

ニンという、快楽をもたらしたり、

幸せを感じさせるホルモンが

出ることがわかっています。

長谷 澄夫 (著) 『なぜ母親は子どもにとって

               最高の治療家になれるのか』

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