日本におけるホリスティック医学の第一人者で
あり、87歳の現在も医療現場に立ち続ける
帯津三敬病院名誉院長・帯津良一氏。
ホスピス医としてこれまで約4000名の患者を
看取る一方、病に拘らず支援を必要とする
人々の担い手の育成に尽力する
めぐみ在宅クリニック院長・小澤竹俊氏。
長年、人間の生と死を見つめ続けてきた
医師お二人は人生の幸福について
どのように考えておられるのでしょうか?
『致知』最新号に掲載されている
「幸福な生き方と死に方」より、
帯津氏のお話の一部をご紹介します。
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お恥ずかしい話ですが、外科医時代の私は、
患者さんは壊れた機械、
医師は優秀な修理工という感覚でした。
ところがホリスティック医学は
医師と患者さんが二人で戦略を練り上げるので
対等な関係になる。
戦友ですから凶弾に倒れた時には必ず見送りました。
患者さんが亡くなると、病棟から私に連絡が入る。
枕元に座ってしばらく旅立ちを見送るわけですが、
不思議なことに患者さんの顔が皆よくなるんですよ。
早い人で一、二分、遅い人でも
一時間くらいすると素晴らしい顔になる。
なぜだろうと考えていて、
やはりこの世でのお務めが終わって
故郷に帰る安堵の表情だと思ったんです。
そのように考えると、人間を丸ごと見る
ホリスティック医学は少し狭すぎる。
免疫学の多田富雄先生は
「自然界は場の階層から成る。
素粒子から虚空までの階層を成している」
とおっしゃっていますが、
人間という階層だけ見ていてはいけないんですね。
つまり、がんに対して
人間より一つ下の階層である臓器のみを
取り扱う西洋医学では手を焼くことが多い。
そうすると人間という階層を取り扱う
ホリスティック医学が重要になるわけですが、
階層は上下全部繋がっているわけだから、
空間的、時間的に人間だけ、
この世だけを見ていてはいけない、
死後の世界をも視野に入れた医療でなくては
いけない。そのことに気づかされたんです。
ある講演で
「医療は治したり癒やしたりするのは方便で、
患者さんに寄り添うことが何よりも大事です」
という話をしたところ、
あるお坊さんからこう言われました。
「先生、その話はよく分かります。
ただ、私が見ているとドクターやナースで
患者さんの命に寄り添っている方はいません。
死を命の終わりではなく
命のプロセスの一つとして考えると、
死の向こう側が見えてくる。
その時に命に寄り添うことが
できるのではないでしょうか」と。
患者さんに本当に寄り添うとはどういうことかを
模索していましたから、
このひと言にはドキッとしましたね。
以来、死後の世界を含めて人間を丸ごと見る
「大ホリスティック医学」を
提唱するようになりました。
私はこれがホリスティック医学の
究極だと思っています。
(……本誌に続きます)
帯津氏と小澤氏による全10ページ分の対談の
中では、以下のようなお話が展開されています。
・八十七歳、いまも旺盛なエネルギー
・西洋医学の限界とホリスティック医学
・患者の命に寄り添うことの重み
・医師として死生観をいかに伝えるか
・苦しみの中でしか気づけない幸せ
対談の詳細はこちら。ぜひ最新号をお読みください。
https://www.chichi.co.jp/info/chichi/pickup_article/2023/202311_obitsu_ozawa/
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!