世の中に偶然はない.すべて何かしらの意味.メッセージを携え必然的に起こる 第 354号

 お好み焼きソースでトップシェアを誇る

広島のオタフクホールディングス。

 社長の佐々木茂喜さんは若き日、仕事の

大切な仲間を亡くされています。

 その時、佐々木氏は何を思い、何を感じ

取られたのでしょうか。

────────[今日の注目の人]───

★ 世の中に偶然はない ★

佐々木 茂喜

(オタフクホールディングス社長)

───────────────────

 私が家業のオタフクソースに入社したのは、

大学卒業後の昭和57年でした。

 ところが、入社して2年目に、予て体調を

崩していた父(当時会長)が他界。

 さらに生来の自由人だった長男の兄も自分が

会社を継ぐというふうでもなく、事実上、

次男の私が長男としての役回りを

果たす必要に迫られたのでした。

 そして、12年間、地元の工場で勤務した私は、

営業の経験が一切なかったにもかかわらず、

がんを告知された大阪支店長の後任として

大阪に赴任することになりました。

 前任者の金本さんは非常に仕事ができる方で、

工場次長だった私にたびたび無理難題を

吹っ掛けてきては激しくやり合った

間柄でした。

 その方が私を後任に選んでくださった

のです。

 しかし、その翌年、平成7年に直面した

のが阪神・淡路大震災。

 幸い大阪支店は何とか営業を続ける

ことができ、私は非常時の現場を

指揮しながら毎週末、避難所の

公民館などに焼きそばを

焼きに行きました。

 そこには治療でやせ細った金本さんも

御子息を連れて参加してください

ました。

 その3か月後に金本さんはお亡くなりに

なりましたが、その生き様はいまなお

私の心に深く刻まれています。

 また、私が大阪支店長になった際に

工場を託したある若手社員のこと

も、忘れることはできません。

 彼は若い頃少々やんちゃをしており、

家族と疎遠になっていましたが、

仕事熱心で人望も篤く、

私の右腕でした。

 しかし、私が東京支店長になった平成10年、

肝臓がんを患い35歳の若さで亡くなった

のです。

 生前、酒席で

「どうしてそこまで働いてくれるのか」

と尋ねると、彼は

「兄貴が僕のことを

 見てくれているからですよ」

と言ってくれました。

 そして、亡くなる間際、もう目も見えない

状況でしたが、病室を訪れて手を握ると、

私だと分かってくれたのか、

「僕を工場に連れて帰ってください」

と言い、それが最期の言葉となりました。

 大事な人を次々亡くしたり、これからと

いう時に大震災に直面したりと、

どうして自分にばかり

 辛いことが続くのだと嘆いたり、投げやりに

なりかけたこともありました。

 しかし、そのような中で、私が自然と心の

支えにするようになったのが、

「世の中に偶然はない」という言葉です。

 善いことも、苦しいことも、すべて

何かしらの意味、メッセージを携え

必然的に起こってくる。

 そう思えると……

※幾度も悲しみを乗り越えたことは、

佐々木さんの人生観、経営観に

大きな影響を与えます。

 お好み焼きの文化を発信し続ける

佐々木さんの具体的な取り組み

は誌面をお読みください。

 『致知』2016年7月号  

       連載「私の座右銘」P78

  今回も最後までお読みくださり、

    ありがとうございました。 感謝!

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