2020/05/23 (土) 7:33
ペンシルロケットの開発者であり、
「日本の宇宙開発・ロケット開発の父」
といわれる糸川英夫博士。
『致知』2010年2月号より、
その薫陶を受けた的川泰宣氏の
お話をご紹介します。
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「独創力を発揮するための三条件」
――糸川英夫博士の教え
的川泰宣
(宇宙航空研究開発機構<JAXA>
名誉教授・技術参与)
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糸川先生はよく「独創力」の大切さについて
話されていましたが、一般向けに行われた
講演会でこんなことがありました。
先生は、幼い男の子を抱いて前の席で
座っているお母さんに
「その子を独創力のある子に育てたいと
思いますか?」と聞かれました。
「もちろん」と答えたお母さんに、
「そのためにあなたはどう育てるつもり
ですか?」と聞くと、そのお母さんは
「独創力を発揮するには自由でなければ
いけないから、この子がやりたいと
思ったことは何でもやらせます」
と答えました。
先生は天井を見てしばらく考えていましたが
「あなたは数年すると、絶望するでしょうな」
と言われたんです。
「何でも好きにやって独創力がつくのなら
チンパンジーには皆、独創力がある」
と。
先生が続けて言われるには
「人間には意志というものがあって、
自分はこれをやりたい、という思いに
どこまでも固執しなければいけない」
と。いったんやりたいと思ったことは、
絶対にやり遂げるという気持ちがなければ、
やっぱり何もできません。
一度決心したことは、石にしがみついてでも
やり遂げる強い意志が必要だ、
と第一に言われました。
第二には、過去にどんな人がいて、
何をやったかを徹底的に学習
しないとダメだ、と。
アインシュタインは、
ニュートンのことを徹底的に学習して、
ニュートンが考えることはすべて分かる
という状態にまでなった。
そうやって初めて、ニュートンの分からない
ことが分かるようになったんです。
だから過去の人がやったことを
決して馬鹿にしてはいけない。
これまで先人が残した考えの上に乗っかって、
初めて新しいことが生まれる。
だから、徹底的に勉強しなきゃいけないと
言われました。
第三は、少し意外だったんですが、
自分が何か独創力のある凄い仕事をしたと
思っていても、世の中が認めなければ
そのまま埋もれてしまうことになる。
世に認められるためには、
他の人とのネットワークをしっかり築いて
よい関係をつくっておくことが大事ですと。
先生はその後、
「私は独創力と縁のないことを言ってるように
聞こえるかもしれないけれど、
世の中の独創力はそうやってできてるんですよ」
と話された。
先生はまさしくそれを貫かれたと思うんですね。
同時代の人がやっていることを
真似るようなことは決してしないけれども、
過去のことは非常によく勉強されていますよ。
糸川先生は、誰も考えなかったことを考える
のが大好きなんですよね。
でもその基盤には、自分が正当に継がなきゃ
いけないものを、物凄くしっかり勉強している
ということがあるわけです。
その上に立って、初めて独創力が
生まれてくるんだなということは、
先生を見ていてよく感じました。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!