中井宏さんは27年前、25歳の時に脳脊髄液
減少症を発症しました。
激しい頭痛や嘔吐、倦怠感。
しかし、当時は病気として認定されず、
周囲の無理解に苦しむ時期が続きます。
自身の闘病や患者の救済活動など長い
歩みがここから始まるのですが
中井さんはこの逆境をどのようにして
乗り越えられたのでしょうか。
────────[今日の注目の人]───
★ どんな絶望の中でも
必ず希望は生まれてくる ★
中井 宏
(脳脊髄液減少症患者・家族支援協会代表理事)
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日本に戻り、様々な検査を受けたのですが、
結局、体調不良の原因は分からずじまい。
私は28歳にしていわゆる“ドクター・ショッ
ピング”の日々を送ることになりました。
鍼灸やマッサージなど、あらゆる治療を
試していったのです。
周囲からは、「働かずにぶらぶらしている」と
随分言われましたが、すさまじい倦怠感と
様々な体調不良から、ベッドから起き
上がるのも辛く、どうしても働く
ことができません。
ただ、生来の前向きで行動的な私の性格を
知っている両親だけは「何か理由がある
のだろう」と信じてくれ、何も言わず
治療費を出し続けてくれました。
どこかに問題があるはずだとの思いで、私は
一所懸命病院や治療院に通うのですが、
「どこにも異常はない」と、
精神的な問題にされ、
周囲からも「怠けているだけだ」
と見なされる。
そして、両親の蓄えは治療費にどんどん
消えていきます。
思うように体は動かず、周囲に理解して
もらえないという葛藤と憎悪渦巻く
心中、私の心を救ってくれたのが
“読書”でした。
病状を知った蔵書家の友人が、「私が君に
必要と思う本を選択するから、本を
たくさん読んでみたら」と、
週に何度か自宅に
招いてくれるようになったのです。
私は本棚にずらーっと並んだ蔵書の中から、『論語』
や『孟子』『聖書』、イギリス文学、フランス文学、
ロシア文学などの古典、さらには歴史、政治・
経済の関連書まで、あらゆる書物を貪る
ように読んでいったのでした。
本を読み終えた後は、友人と読後感などを
語り合うのですが、その中で私は、世の
中というのは絶えず新しい常識が生
まれると同時に、矛盾や葛藤も
生まれていること。
何が正義で何が悪かは絶えず変化して
いること。
人生をよきものにするには、人生という大海原
を航海するための的確なアドバイスを送って
くれる羅針盤のようなよき友や師匠の
ような存在、良書を持つことが
重要であることなど、
本当に多くのことを学び、少しずつ物事を
前向きに考えることができるように
なっていったのです。
特に……
※中井さんの病名が明らかになるまでその後、
10年以上の歳月が流れます。
中井さんの闘病の歩み、それを支えた読書に
ついてはぜひ『致知』誌面でお読み
ください。
『致知』2016年7月号
特集「腹中書あり」P40
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。 感謝!