20世紀初頭の時期に、国際的穀物商になる
ためには、大資本や大きな穀物貯蔵所や、
船や、何千人もの従業員を持つ必要
はなかった。必要なのは、融資
と、電話と、コネと、この
仕事の技術的なからくり
に精通していること、であった。
思いがけない場所で新しいお得意様を見つけ
るのが、疲れ知らずのノーデマンとチュリ
オンの得意技だった。この商売の専門
知識である、輸送設備や港の深さ、
船のスケジュール、穀物の品質、
そしてもちろん穀物取引契約
の解りづらい用語などに
ついてのしかるべき理解も、
2人の才能のうちだった。
1970年代、CIAが、ソ連の穀物取引状況に
ついての極秘情報をどうやって入手したかは、
別に大した謎ではない。穀物企業が洩らし
たのである。CIAは長年にわたって、
穀物企業と密接な接触を保っていた。
CIAのワシントンをベースとする「国内
情報収集支部」が、海外から帰国した商人
をチェックして、彼らに取引情報に関
する報告書の提出さえ求めていた。
事実、CIA当局と、数十社の多国籍企業の
幹部との間には、規則的な交流があり、これ
ら業者がもたらす、諸外国の経済に影響す
るような重大な取引に関する報告は、し
ばしば、いかなる政府機関の情報より、
はるかに正確で完璧なものであった。
CIAにとって、多国籍企業は、
情報面での金鉱であった。
穀物ビジネスが、海運業と腹違いの兄弟に当
たるとすれば、銀行や金融業ともきわめて近
い親戚関係にある。ある意味では、穀物企
業は巨大な銀行に似ている。莫大な額の
キャッシュが、その金庫に流れ込む。
会社の在庫目録中の穀物を表す、穀物倉庫
のレシートは、ほとんどの銀行で、
有効な手形として通用した。
巨大企業の情報力。巨大企業は、ほかの企業
には持てない世界的情報を持っていることで、
かくも有能に、かくも手におえないものと
して、そのユニークさを誇っている。
ある特定の日に、世界の穀物業界で実際に起
こりつつあることを把握するには、莫大な量
の情報が必要だが、それをまとめ上げる能
力を持っているのは、多国籍企業のほか
にはないからだ。
実際に穀物を集め、相場を立て、船を動かし、
荷を運ぶのはもちろんホワイトハウスでも
農務省でもなく、穀物メジャーと呼ば
れるいわゆる「巨大穀物商社」なのである。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!