松下幸之助氏の生き方や考え方は、経営者に
限らず、広く人々の心を捉えて魅了する
ものがあります。
松下幸之助氏がいまも親しまれる
理由は何なのでしょうか。
長年、氏に親しく接してきたお二人の
話から、その答えが見えてきます。
────────[今日の注目の人]───
★ 松下幸之助が目指したもの ★
岩井虔(PHP研究所客員)
×
上甲晃(志ネットワーク「青年塾」代表)
───────────────────
【上甲】
なぜ松下幸之助がいまも尊敬され続けるのか。
それは金儲けをしたからでも何でもない。
やはり人並み外れた公的精神、公心の
持ち主だったからです。
自分の金儲けや自分の事業を大きくする
以上に、世の中をよくしたいという
気持ちが非常に強かった。
人間は公心を持った時に初めて立派な人
と言われます。
私的な成功はどんなに大きくても立派だ
とは言いません。
営業マンでも、自分のノルマ達成のため
の熱心さは「頑張っているね」とは
言われても、立派とは見られません。
雨の日にいくらウォーキングをしても「熱心
な人」と思われるだけです。
しかし、その人がゴミを拾いながらウォー
キングをしていたらどうでしょう。
立派な人と言われるわけですね。
私はこれからの日本、この立派な人を
育てる力闘向上こそが求められる
と思うんです。
商売で言えば、自分の金儲けのために
力闘向上するのではない。
お客様のために力闘向上する、世のため
人のために熱心である、ということです。
後世に名を残すのも、詰まるところ公の
ために力闘向上する人ではないでしょうか。
【岩井】
そのことはビジネスマンに限らずとても
大事なことだと思いますね。
松下幸之助の根底にあるのは奉仕の念です。
人々への奉仕を先にして儲けを後にする。
そうやって一所懸命頑張れば必ず儲かる、
世の中はそうなっているとも常々
言っておりました。
私がいま力闘向上と聞いて思うのは、やはり
我われはまだまだ勉強が足りないし、本質的
なことはまだよく分かっていない
ということです。
松下幸之助は自分が無知であることを
よく自覚した上で、人に学び、
物事に学び、森羅万象に
学んで道を求めた人でした。
また、松下幸之助の言う「素直」には
私心にとらわれない、
常識にとらわれない、
先入観にとらわれない
という意味もあります。
松下幸之助は生涯、その「とらわれ」を排し、
物事の本質を探究し続けた人でした。
これは我われも大いに見習いたいもの
だと思うのです。
※月刊『致知』はどんな時代でも変わること
のない人生や仕事の原理原則を探究する
人間学の月刊誌です。
まだお読みでない方はこの
機会にぜひご購読を!
『致知』2016年8月号
特集「力闘向上」P70
今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。 感謝!