BC級戦犯裁判に立ち向かった本間中将夫妻や
山下大将夫妻の生き様を通じ、戦犯裁判を「文
明の裁判」などと単に批判するのではなく、
家族の絆や夫婦愛、祖国愛の素晴らしさ、
凛として戦犯裁判を受け入れる潔さを
感動的に描く。
戦犯裁判を美しい一大叙事詩のように描き、
読む人に爽やかな感動を与える。読み進む
うちに日本人であることに誇りを感じ、
体内に日本の正統の歴史が甦るのを感じる。
2005年、フィンランドの教育政策を調べる
ためヘルシンキの小学校を訪ねた。ピルヨ
校長は開口一番、次のように語り始めた。
「フィンランド語そのものが受け継がれ、生き
続けてきたことが私たちフィンランド人にとっ
て誇りなのです。スウェーデンに半世紀もの
間支配され、その後、ロシアとドイツの狭
間で、多くの犠牲を払いフィンランドを
護ってきました」 ⇒
「私たちにはフィンランド語を次の世代に
引き継ぐ責務があるのです。そのため子ど
もが生まれた両親には、フィンランド語
の読み聞かせをするよう指導している
のです。現在、フィンランドの家庭
では最低でも1000冊は蔵書があるでしょう」
フィンランドではフィンランド語を保持して
きたことが誇りなのである。自国の歴史に誇
りを持ち、その誇りある歴史を「次の世代
に引き継ぐ責務がある」とピヨル校長は
目を輝かせて語った。
私は有事法制を長年研究してきたが、多くの
政治家や官僚と接していて感じることはピル
ヨ校長のような目の輝きが日本から消えつ
つあるように思えてならないことである。
一般に国家は、その国の憲法や法律と、
その国の歴史や伝統や文化とが深く有
機的に結合して、初めて安定すると
言われる。
私の部屋に堆く(うずたかく)積み上げ
られた有事法制関連資料の中に、山下
奉文大将や本間雅晴中将の遺稿集
がある。
私は30年来、有事法制の研究や政策立案に
関与してきた。これらに関する資料は
本邦随一だと自負する。
現在、日本に必要なことは日本の歴史と断絶
した奇形の有事法制や憲法改正を乱雑に積み
重ねることではなく、日本人としての「イ
リュージョンと夢と理想と精神と魂」を
継承し、その上に正統の有事法制や憲
法改正を築くことであると確信する。
この日本人としての「イリュージョンと夢と
理想と精神と魂」をもっとも純粋に昇華した
ものに、BC級戦犯裁判で散った人々の思
いをあげることができる。
BC級戦犯裁判で散った人々は何を思い、
いかに散華したかを調べると、私たちに
歴史や有事法制や憲法の根本、日本人
の心の底流を流れ続けている「イリ
ュージョンと夢と理想と精神と
魂」がひしひしと伝わってくる。
福冨健一『南十字星に抱かれて
:BC級戦犯の遺言』
の詳細,amazon購入はこちら↓
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!