プーチンはロシアをどう変えてきたか? 言論
弾圧、経済疲弊、頭脳流出――混迷のロシア
は何処に向かうのか? ロシア史上、稀に
見る長期政権を継続中のプーチン。
「強いロシアの再建」を掲げ、国内には苛酷
な圧政を敷く一方、経済は低迷、内政の矛盾
は頂点に達している。ロシア研究の碩学が
沈みゆく大国”プーチンロシア”の舞台
裏を詳細かつ多角的に検証する。
現ロシアは「プーチンのロシア」以外の何物
でもない。ロシアの作家、ウラジーミル・
ソローキンは記した。ロシアは「その
指導者、プーチンの気が向くまま
に自由自在に動く存在へと
堕落してしまった」と。
プーチノクラシー (プーチン統治)は、もっ
ぱらプーチン個人の意向や力量に依拠する
システムにほかならない。
プーチンなしには一日たりとも存続が困難で
ある。いま、プーチンは 攻めから守りへと
基本姿勢を転換した。己の政治的サバイ
バルに戦々競々としている。
これは、政権が末期的症状にあることの一証左
とみなせるかもしれない。じじつ、ヒトもカネ
もプーチン・ロシアから流出する一方のよう
である。まるで船の難破を予知して鼠が
逃げ出すように。
プーチンが汲み上げた教訓おそらく国際政治
で何十年間に一度起こるか起こら
ないような地殻変動。
これは、当然、プーチンの人生観やものの考
え方に決定的に重要な影響をおよぼしたに
ちがいない。思い切って大胆に要約す
ると、それはプーチンに以下のよ
うな教訓をあたえたと推測できるだろう。
第一に、特定のイデオロギー、政治・経済
体制、ましてや政治指導者を信用するこ
とが禁物であること。こういったも
のは、危機に直面するとアッと
いう間に変質したり、もろ
くも崩壊したりしてしまう。
革命嫌悪主義者へ
第一のレッスンに関連してプーチンが
ほとんど必然的に引き出した。
第二の教訓は、以下のことだった。
この世の中には、結局のところ自分以外
に頼るべきものは何もない。
強い国家は、ロシア人にとり秩序の源泉かつ
保証人であり、すべての革新の創始者
かつ原動力なのである。
「強い国家」の再構築。これは、単にプーチン
個人の信念であるばかりか、彼の仲間である
「シロビキ」 (秘密警察、軍部など治安
関連の省庁につとめている人々)、そ
して圧倒的大多数のロシア国民に
よって支持されている国家
目標である。こうみな
して、間違っていないだろう。
ロシア国民、とりわけ「シロビキ」は、プー
チン同様、ソ連邦の崩壊を「二十世紀最大
の地政学的な大惨事」とみなし、旧ソ
連邦が「偉大な列強」だった時代
にたいして強い郷愁の念を抱いている。
かれらはロシアの「大国性」を信奉し、かつて
国際場裡で帝政ロシアや旧ソ連が有していた
威厳や存在感を復活させることを、みず
からの崇高な使命とみなしているのだ。
国家権力の強化プーチニズムが、その達成すべ
き目標の第一として掲げる「強いロシア」。
その具体的内容は、一体どのようなものなの
か。「強いロシア」を構成する諸要件のなか
で、プーチン自身は何を最も重要な要素
とみなしているのだろうか。
上の問いに端的に答えるならば、「強いロンア」
の構成要素としてプーチンが最重要視している
のは、ロシアの独自性といえよう。ロシアは、
土着の歴史、民族、言語、文化、その他
で、固有の伝統的価値をもつ。
そのようなロシアは、したがってお仕着せ
の外国モデルを有難がって猿まねする
必要など、毛頭存在しない。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!