長い歴史の中で子供たちのテキストとして
読み続けられた『実語教』『童子教』
という書物があります。
とりわけ『実語教』は平安時代に生まれ、
実に千年もの間、日本人の精神形成の
支柱となってきました。
両書を貫くもの、これがいまや日本人から
忘れ去られようとしている勤勉精神です。
幼少期から『実語教』の教えに親しんできた
JFEホールディングス名誉顧問・數土文夫氏
と、弊社から『実語教』『童子教』の解説書を
刊行している明治大学教授・齋藤孝氏に、
その魅力や現代的な意義について
語り合っていただきました。
その一部をご紹介いたします。
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『学問のすゝめ』の
ベースとなった『実語教』
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【數土】
齋藤先生が致知出版社から出された
『実語教』『童子教』の本は私も大変
興味深く読ませていただきましたけれども、
この二つは日本人の精神文化に
多くの影響を与えた大切な書物でありながら、
いまその存在が知られていないことが
私は残念でなりません。
【齋藤】
おっしゃる通りですね。
私がぜひ本を出版したいと思った理由も
実はそこにありました。
『実語教』は平安時代末、
『童子教』は鎌倉時代末と、
それぞれ成立時期は違いますが、
学びの大切さや礼儀作法、
人との付き合い方など人間が生きる上での
大切な知恵が簡潔な言葉で書かれていて、
寺子屋教育などを通して日本人の間で
ずっと読み継がれてきました。
特に『実語教』について私は
「日本人千年の教科書」という言い方を
していいと思っています。
【數土】
なるほど。その通りですね。
【齋藤】
例えば、
「天は人の上に人を造らず人の下に
人を造らずと言えり」
という福沢諭吉の『学問のすゝめ』の
冒頭の一節はあまりに有名ですが、その後に
「されども今広くこの人間世界を見渡すに、
かしこき人あり、おろかなる人あり、
貧しきもあり、富めるもあり」
とこの世の中には貴賤や貧富の差が
あるという言葉が続いています。
そして、その理由について
諭吉はこう述べているんです。
「『実語教』に、人学ばざれば智なし、
智なき者は愚人なりとあり。
されば賢人と愚人との別は
学ぶと学ばざるとに由りて出来るものなり」
つまり
「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」
という言葉をもとに、賢い人と愚かな人の差は
学ぶか学ばないかによって決まると言っている
わけです。
『学問のすゝめ』は当時の大ベストセラーです。
ということは、その前提である『実語教』の
言葉も日本中の人たちに違和感なく
受け止められたのではないでしょうか。
【數土】
『実語教』『童子教』の教えが
それだけ日本人の間で浸透していたと
いうことでもありますね。
・『実語教』『童子教』の解説書に込めた思い
・日本人の精神形成に大きな影響
・『実語教』『童子教』はなぜ生まれたのか
・還暦を過ぎて学び直すためのテキストに
・日本では庶民への教育が浸透していた
・謙虚と勇気は表裏一体
●詳しい内容はこちらをクリックしてみてください。
https://www.chichi.co.jp/info/chichi/pickup_article/2023/202312_sudo_saitou/
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!