大鼓の奏者として、独創的な活動を続ける
大倉正之助さん。
全身全霊で能楽と向き合う傍ら、思いがけ
ない一面もお持ちでした。
────────[今日の注目の人]───
☆ 人間に備わった不思議な力 ☆
大倉正之助(大倉流大鼓を受け継ぐ能楽師)
×
村上和雄(筑波大学名誉教授)
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【村上】
限界を超えるような挑戦をしたことで、新たな
表現活動への道が開けたわけですね。
【大倉】
限界を超えるということについて言えば、私は
これまでに何度、死んでもおかしくないよう
な大事故に遭っているんですよ。
【村上】
何度も? 何が原因ですか。
【大倉】
若い頃からオートバイが好きで、それが主な
原因です。
でも、これまで骨折してもギプスをしたことは一度
もなくて、全部自然治癒力で治してきました。
例えば、普通だったらギプスだらけになって寝か
されて、それこそ何か月も入院しなければいけ
ないような大怪我をしたこともあります。
ところが私の場合、大怪我をした三日後とか一週間
後に舞台があるわけで、とてもベッドで横になって
いるわけにはいきません。
【村上】
どうするのですか。
【大倉】
何とか三日後には舞台に立てる状態にしたい、と
考えているととにかくいろんな発想が湧いてくる。
熱いお湯に入ってみようとか、氷水に浸けて
みようとか(笑)。
そういう時はもう飲まず食わずの状態で、
とにかく自分の身体を極限に追い込む。
あとは動物のように丸くなって
寝てしまう。
ある時は丸太のように脚が腫れ上がって、
膝が曲がらないこともありました。
これでは舞台で正座をすることも
できません。
そこで熱いお湯と氷水に交互に足を浸けて
いたのですが、そのうちにギュッと
膝が曲がった。
その時は、「これで正座ができるぞ」って
喜んで、舞台当日は知らん顔をして
演奏していました(笑)。
【村上】
それだけのことがあっても、バイクは
やめられないんですか。
【大倉】
やめられないですね(笑)。
ただ、そうしたことを経て、人間には
不思議な力というか、可能性が備わって
いることを実感しましたね。
そもそも能というのは……
※伝統芸能の新しい風を吹き込み
続ける大倉さん。
そのダイナミックな活動の続きは
本誌でどうぞ!
『致知』2017年1月号
連載「生命のメッセージ」P104
本年もどうか宜しくおつき合いの程
お願い申し上げます。
今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。感謝!