人間の備えた強さを存分に発揮すれば納得のいく人生を過ごせる 第 724 号

 人生を決めるのは神でも仏でもない。

 己の感性だ。

 失敗しない人生を送るには強くて健全な

エゴを育てるしかない。

 人生にはいろいろな岐路がある。

 恋愛にしろ結婚にしろ、あるいは仕事の上での

意見の違いや摩擦、いずれにせよそこで何を

選ぶか、どう進むかを決めるのは所詮、

自分自身でしかない。

 その選択の起点は自らのエゴによるしか

ありはしない。

 成功、不成功、勝利、敗北、人生を決める

のはエゴの力でしかない。

 ならばエゴとは何なのか、それは人間の個性。

 その個性とは何なのか。

 個性とはその人間の感性が培うものでしかない。

 私が都知事に就任してすぐに、英国のサッチャー

元首相と会談した。

 そしてフォークランド紛争について語り合った。

 彼女はこういった。

「私は誰がどう見ても傾いていくイギリスの威信と

いうものを取り戻すためには、あの小さな領土

を絶対に手放してはならないと思った。

 そこで周りに相談しても皆が躊躇するあの

戦争を私自身の責任で決断したのです。

 たった一人だけ参謀総長が私を支持してくれた

ので、本当に2人して国家の命運を決める

あの戦争に踏み切ったのよ」

 さらにこう語っていた。

「やはり政治家は一度決めたことを立ち止まらず

に貫き通さなければ、政治家である意味

はありはしないと思うわ。

 そして周りの反対を押し切ってでも正しいと

思ったことを行うときに、それを支持する

信頼できる有能な部下が一人だけでも

あれば必ず事を成し遂げることが

できるものよ」

 感性を磨きたければ趣味を持て。

 人生にはいろんな出来事が

待ち受けている。

 その行程のさまざまなハードルを越えて納得のいく

人生を過ごすために必要なものは、人間の備えた

強さを存分に発揮することに他ならない。

 人間の強さとは何かといえば、それは

その人間の備えた個性の力だ。

 何か自分が好きな趣味をもつことは、なんとか

もっと上達したいと工夫することを意味する。

 自分の感性を強いて駆使して工夫を促す。

 これは極めて大脳生理の理にかなったこと。

 自分の自我なり個性に自信のない人間は、

何でもいい、たとえば動物を飼うこと

でも芸事でもスポーツでもいいから、

絶対に自分の趣味を持つこと。

 私が総じて発想力のない役人たちにいっている

ことは、君たちが発想力をつけるためにも何

でもいいから、こんなつまらんことと

思わずにとにかく自分が興味の

持てる趣味を持て、と。

 そして、その趣味で自分の上達をはかることで

初めて感性が育まれ、強靭なものになって

発想力を備え、仕事の中でそれが活か

され、かつまたそれによってエゴ

が強化され、組織のなかでの

その人間の評価も高まる。

 世界的大数学者の岡潔さんの成功の所以は、

私は岡さんが日頃から非常に俳句が好きで、

特に芭蕉の俳句にハマッていたことに

あると考えている。

 岡さんは、あるとき数学の難問を解くために

思い立って、芭蕉の有名な奥の細道を、芭蕉

が作句した時候と場所に合わせて辿った。

 たとえば「しずかさや岩にしみ入る蝉の声」なる

名句でいえば、あの山形の立石寺の裏庭を訪れ、

そこの縁台に腰をおろし、庭で鳴いている

蝉の声に聞き入りながら鑑賞したそうな。

 そのようなことを繰り返した結果、彼の感性、

つまり自我が触発され、誰も成しえなかった

数学の大難問を20年で解ききってしまった。

 これは俳句という世界で最も短い詩形をあみ出した

日本人独特の感性、たとえばアンドレ・マルローが、

「永遠を一瞬のなかに凍結できるのは日本人だけ

だ」と驚嘆した日本人独特の感性を、岡さん

が俳句の中に認め見出した。

 それを自分の体の内で体得して味わうことで、その

エネルギーが感性を刺激し岡潔のエゴを形成し、

それが働いて誰も解けなかった数学の難問

を解かせたということだ。

 浪費こそが最大の貯金。

 無理して使った金の人生への効用。

 私は海でのスポーツとしてのオーシャンレースに

現(うつつ)を抜かしていた。

 これまた日本の近海では味わうことのできない、

まさに太平洋ならではの海の風物であり、その

なかで海を操りながら事あるごとにしみじみ

太平洋という世界最大の海の魅力を満喫

することができ、その全てが私の体の

うちにしまいこまれて、わたしの

物書きとしての、いや、それ以外の私のすべての

人格というものの形成に、役立って

くれたような気がする。

 昔からいい習わされてきた絶対の教訓、

「天は自ら助くる者を助く」という

言葉を思い起こすべき。

 自分で自分を助けることで、自分で努力

して自分の人生を切り拓いていく

ために強い自分をつくる。

 強いエゴを培い備えていくためには

他人に頼ることなしに自ら努める。

 自らの個性を強めるために鋭い感性を培い

備えるためには、自分の好みに合った趣味

を選び、それをこなして熟達するために

努力する、つまり脳幹を刺激し続けることだ。

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今回も最後までお読みくださり、ありがとう

            ございました。感謝!

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