人間は自分が思うほど立派ではない 第1,653号

2020/01/25 (土) 7:34

累計16万部突破の人気を誇る
「いつか読んでみたかった名著シリーズ」は、
“読みたかったけれど読んだことのない”
日本の名著を気軽にお読みいただくため
企画されました。

いわゆる超訳ではなく、
原文を忠実に訳しながらも
可能な限りわかりやすい現代語訳に
置き換えているため、大人はもちろん、
中高生でも十分に読破できます。

今日は福沢諭吉の名著『学問のすすめ』の
一節をご紹介します。

………………………………………………
人間は自分が思うほど立派ではない
………………………………………………

人が世渡りしていく様子を見ていると、
気がつくことがあります。

人間とは、心に思うより意外と悪いことをし、
心に思うより意外と愚かなことをして、
心で企てるより意外と立派なことを
しないものである、と。

どんな悪人であろうと、生涯の間、
がんばって悪いことだけをしようと
思う者はいないでしょう。

ところが、物事に接して、意図せず悪念が
生まれ、自分自身、悪と知りながら、
いろいろと身勝手な説をつけ、
強引に自分を慰めるわけです。

ほかのケースを考えてみましょう。

何か行動しているとき、
決してこれを悪事だと思っておらず、
毛の先ほども心に恥じるところがありません。

それどころか、ひたむきにいいことだと信じて
いて、他人が異論を唱えたりしたら、怒りだ
したり、逆恨みすることさえあった。

ところが、年月を経て考えなおしてみれば、
自分が不行き届きであったと
心に恥じ入ることもあります。

また人の性には、賢愚や強弱があるとはいっ
ても、自分のことをケダモノの知恵にも
かなわないと思う者はいないでしょう。

世の中にあるさまざまな仕事を見分けて、
「これであれば自分の手に負える」と思って、
自分なりに仕事を引き受けるわけです。

ところが、その仕事をやっていると
意外と失敗が多くて、最初の目的を達成でき
ない。世間の笑いものになり、
自分でも後悔することはよくあります。

世の中で起業して失敗する人を見ていると、
本当に吹き出さずにはいられないほどの
愚行をしでかしたように見えます。

しかし、それを企てた人は、
必ずしもそこまで馬鹿ではありません。
よくその実情を考えれば、
もっともだと思えるような話もあるのです。

つまり、世の中の事件とは、生き物であって、
簡単にそれが起きるのを予知することはでき
ません。こういうわけで、知者といっても、
意外と愚行を犯す人が多いのです。

●学問のすすめ
福沢諭吉・著、奥野宣之・現代語訳

「天は人の上に人を造らず」で始まる
明治初期の大ベストセラー。

驚くべきは、一般的なイメージと異なるその内容。
単なる立身出世論ではなく、政府のあり方や
社会制度、組織論や人格論、働き方、人付き合い
のコツなど、現代にも通じる興味深いテーマが、
17編にまとめられている。

また、「人の顔色は、家の門構えのようなもの」
など、ユニークな表現で生き方の真髄が示され、
140年もの間読み継がれてきた名著の醍醐味が

十分堪能できる。

【お求めはこちらから】

 今回も最後までお読みくださり、

    ありがとうございました。感謝!

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