第一次世界大戦、ロシア革命、第二次
世界大戦、そして西側同盟の成立…
「戦争と革命の世紀」に国運
を担った6人の肖像。
戦後間もない時期に首相を務めた吉田茂
は『回想十年』と題する回想録の冒頭
に、アメリカ人のハウス大佐が語
った言葉を引用して、「ディプ
ロマチック・センスのない
国民は、必ず凋落する」と記している。
「ディプロマチック・センス」とは、吉
田にいわせれば、「外交的感覚」で
あり、「国際的な勘」であった。
それは、海図のない国際政治の舞台で、
いかにして自らの国益を定義して、
いかにして自国の安全と国益
を守り、国家の進路を展望
するかということである。
「イギリスほど自国の事情を外に漏ら
さず、他国のそれに几帳面に精通し
ている国は、地球上に存在しない」
(16世紀のベネツィアの外交官)
イギリスの強さはむしろ、その国民を基
礎とした外交の技術と制度、そして
それを支える考え方にある。
世界中に張り巡らされたイギリスの外交
体制は、世界のあらゆる情報を精確に
吸収して、鮮やかに分析している。
それにより、イギリスは国際社会で何
が起こっているかを把握していた。
それは単にイギリス外交官の仕事に
よっているというだけではない。
世界中に浸透する諜報活動、すなわち
スパイのネットワーク、植民地にお
ける軍人や植民地官僚、あるい
は現在でいえば紛争地帯に
おける国際平和維持活動
に従事する人々や国連
などでの国際公務員、
そして国際ビジネスで世界
を動いている経済人などがいる。
さらにはBBCに見られるような高い水準の
ジャーナリズムなど多様な人々がイギリス
の世界的な活動を陰に陽に支えている。
そして同時に多様な情報
を本国に流している。
外交の力の本質は何か。
「対外政策とは、何か偉大なもので
あるとか、大きな存在であると
いうことはないのだ。
それは自分自身の問題にも関係するよう
な、あるいはあなた自身の問題にも関係
しているような良識(コモンセンス)
や人間性の上に成り立っているのだ」
(20世紀イギリスの最も偉大な外務
大臣といわれたアーネスト・ベヴィン)
アーネスト・ベヴィンは外相就任以前は、
そもそも外交の仕事をしたことがなく、
政治家として豊富な外交経験を
持っていたわけでもなかった。
それにもかかわらず、ベヴィンは外相と
して歴史に名を残す功績と、外務省の
官僚たちの間に溢れるほどの称賛
と愛慕を生み出した。
まさに「良識」と優れた「人間性」とに
しっかりと支えられた外交で
あったと評価できる。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝