マネー、情報、資源を吸い寄せるために、一本
の矢のように世界を貫くネットワーク、その呼
び名は「ユニオンジャックの矢」。このネッ
トワークを駆使した英国流の世界戦略が分
かれば、日本の進むべき道も明らかになる。
グローバル経済の潮目を読み続けてきた知の
巨匠が、経験知(ミクロ)と世界史(マクロ)
双方の視点から、英国と世界、そして日本
とのつながりを立体化。経済の表層だけ
を見ても分からない、真の成長戦略を見通す。
(参考・ユニオンジャックの矢……ロンドンを
基点に、ドバイ、ベンガルール、シンガポー
ル、シドニーへと伸びる一筋の直線を、英
国のネットワーク力の象徴として表現したもの)
世界を動き回りながら気付いたことは、
英国をグレートブリテン島に限定した
欧州の島国と捉えてはいけない
ということである。
この国のポテンシャルは
ネットワーク力にある。
とくに、52か国の英連邦を緩やかに束ねる
隠然たる影響力、その中でもロンドンの金
融街シティを中核に、ドバイ(アラブ首
長国連邦)、ベンガルール(インド)、
シンガポール、シドニーを結ぶ
ラインを「ユニオンジャック
の矢」とイメージし、その
相関をエンジニアリング
する力に注目すべきである。
その国を考える時、歴史の脈絡の中で、
その国が培ってきたものを理解
しなければならない。
英国がその歴史の中で学び取った
教訓、歴史の蓄積とは何か。
刮目すべきは、血なまぐさい革命と騒擾の
中から、安定した「立憲君主制」に至る
英国流のデモクラシーの定着の過程、
そして植民地主義、覇権主義を
克服し、自らの影響力を温存
する過程ということであろう。
世界史の中で見ると、英国は19世紀半ば
を頂点に、軍事力、産業力において覇権
を失い、どんどん凋落していって
いるかのように思える。
しかし、同時に現在も国際社会の中で英国
は隠然たる影響力を残していること
にも気づかされるのである。
それはソフトパワーとネットワーク力に
よる影響力であることは、強調して
もしすぎることはない。
現在の英国を支えているバイタル産業は、
何よりも金融であり、金融力をテコにし
て世界の多様なプロジェクトを動か
すエンジニアリング力である。
英国はこの金融とエンジニアリングの力に
よって、国際社会のネットワークの中で
今なお隠然たる影響力を維持していると言える。
それこそがソフトパワーであり、そこが理解
できると、ネットワーク的世界観の中にした
たかに生きる英国のもう一つの姿が
見えてくるはずである。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!