何か一つ黙々と続けていくことで自然に新しい道が開ける 第 1,911 号

東京藝術大学を首席で卒業し、ピアニスト
として早くから頭角を現していた舘野泉さん。

フィンランドに単身移住、自身の音楽性を
開花させ世界的な評価を獲得されます。

そんな舘野さんを脳出血が襲ったのは2002年。
片手が動かないという演奏者として
跳ね返しがたいハンディを負います。

その悲しみ、苦難の中で、舘野さんが
辿り着いた心境とは。

───────────────────

(舘野)
本日の対談のテーマは「悲しみの底に光るもの」
ということですが、僕もまた病気を通して
いろいろな世界が見えてくるようになりました。


例えば、周りの人たちは僕の姿を見てやはり
不自由だなと思われるだろうし、「早く回復

して右手が使えるようになったらいいですね」

とおっしゃる方もいます。

早く治るために鍼をしたらいいとか、
この整骨院がいいとか勧めてくださる方も
少なくありません。


だけど僕自身はこの現状に何の不足、
不満もないんです。


もちろん、昔は一人で自由に行動して、
いろいろなことを楽しむことができた。
倒れてからはそれが制限されちゃって、
一人で出歩くことはほとんどありません。

うちにいる時はピアノを弾いているか本を読んで
いるか、そうでなきゃ寝ているか食事をしている
か、それくらいの生活だけれども、それで十分
満足しています。右手が治る、治らないという
こともほとんど考えることはないですね。


(中略)

(舘野)
僕はこれまで人生の計画を立てたことがないん
です。何かをやっていれば、次にやりたいこと
が出てきましたからね。だから一つのことを
黙々と続けていくことで、自然に新しい道が
開けるのだと思うんです。


※本記事は『致知』2006年8月号
特集「悲しみの底に光るもの」より
対談記事の一部を抜粋・再編集したものです

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 今回も最後までお読みくださり、

    ありがとうございました。感謝!

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