アフリカやアジアでマラリア撲滅に尽力
される水野達男さん。
前職の住友化学時代、マラリア防虫蚊帳の
普及に走り回るものの、思うように実績が
出せず、疲労も重なって水野さんは
鬱状態になってしまいます。
しかし、その療養中に心の底から湧いてきた
思いが水野さんの発想の転換と飛躍を
もたらすのです。
────────[今日の注目の人]───
★ 途上国のビジネスに懸ける思い ★
水野達男(マラリア・ノーモア・ジャパン専務理事)
───────────────────
心労や過労が重なったのでしょうね。
アフリカ事業を担当した翌年、日本にいる時に
突然腰が抜けて動けなくなってしまったんです。
医者からは鬱状態と診断され、とても休めない
状態だったのに40日間、自宅で休養する
ことを余儀なくされました。
「まともに仕事に復帰できるかどうか分からない。
仮に仕事に戻れても、アフリカの事業がうまく
いくはずがない」
「これで俺のキャリアは終わったな」
最初の20日間ほどは一日中、そんなことばかり
考えていました。
自分の人生にこれほど失望したことは
なかったですね。
でも、いま思い返しても不思議だったのは、
いくらか体が回復してきた時、それまで忘れて
いたアフリカの一人の女性の姿をふと
思い出したんです。
それはワシントンDCの国連基金事務所で
見たビデオに映っていたウガンダの若い
母親です。
マラリアで高熱を出し病院のベッドで寝て
いた赤ちゃんが亡くなった時、少し後ろで
見ていた母親は悲しみのあまり、あらぬ
方向を見つめて病室の中をあっちへ
行ったり、こっちへ行ったりしていた。
この映像を見た時、私は衝撃のあまり涙が
止まりませんでしたが、仕事の忙しさに
紛れてずっと忘れていました。
自分がどん底にあってこの映像が甦ってきた
時、ある強烈な思いが私の心の中から
湧き上がってきたんです。
「おまえが本当にやるべきなのは、こんなふうに
子供を亡くして悲しむ人を少しでも減らすこと
ではないのか」と。
何のため、誰のために仕事しているのかを一人で
じっくり考えました。
そして、それが明確になるといろいろな
アイデアが湧いてくるんですね。
「そうだ。いまこの瞬間も、うちの蚊帳を必要と
している人は大勢いる。
当面は赤字でも、安い値段で供給すれば、いずれ
在庫がなくなり工場の稼働率が上がって、製造
コストも下がるんじゃないか」
その閃きが……
※鬱状態という逆境を水野さんはどのように
乗り越えられたのでしょうか。
水野さんの大きな気づきは、やがて事業に
大きな発展をもたらします。
続きは誌面で。
『致知』2016年8月号
特集「思いを伝承する」P60
今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。 感謝!