初めて湧いてくるアイデアや閃きがあるものです = 2-1 = 第 2,681 号

いまなお、熱き経営者魂に感化される人が
後を絶たないホンダ創業者・本田宗一郎
(1906~1991)。その情熱をいまなお
引き継ぐ、クルマづくりの原点とは……。

1970~80年代にかけて
「シビック」や「アコード」などのデザインを
手掛けてきた岩倉信弥さんに、
本田宗一郎から受けた薫陶や、
「怒られて掴んだ」モノづくりの極意を
語っていただきました。

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〈岩倉〉
本田さんは凄く大きな夢を語るのですが、
それが決して机上(きじょう)の空論には
なっていない。夢は大きく、目標は高いん
だけど、やっていることは現場主義なんです。

やはりちゃんと物を見て、
直(じか)に物に触れ、
現実をよく知らなきゃいけないという
「現場・現物・現実主義」。
それを外すと「やりもせんに!」と
拳骨(げんこつ)やスパナが飛んでくる。

こちらは大学を卒業して多少知恵がついて
いる分、「いやそれは無理です」とか、
屁理屈を一所懸命並べるんだけど、
言おうとすると怒られる。
しょうがない、やるしかない、
で、やっているうちにできちゃった、
ということが何度もあった。

人間は窮地に追い込まれて、いうなれば2階
に上げられて梯子(はしご)を外され、
さらに下から火をつけられる、
という絶体絶命の危機に立たされ、初めて
湧いてくるアイデアや閃きがあるものです。
それを生み出すためのシステムを、
ホンダでは「缶詰」「山ごもり」「カミナリ」
と呼んでいました。

「缶詰」は一つの部屋に閉じ込められて、
アイデアが出てくるまで一切部屋から出して
もらえない。家に帰ることも許されず、
その空間でとことん考え抜く。

「山ごもり」は温泉に行けと言われ、
喜び勇んで出掛けると、
その安宿には紙と鉛筆しかない。
最新設備のある研究所を離れ、
立ち位置を変えることで
新たなアイデアを生み出すのです。

最後の「カミナリ」は、言うまでもなく
本田さんのカミナリです。これほど恐ろしい
ものはないから、皆逃げ出そうとする。
僕も逃げ出したかったんだけど、
それも悔しいから、なんとか怒られないで
済む方法はないかと考えた。


(※本記事は月刊『致知』2007年8月号
特集「人は教えによりて人となる」より一部を
抜粋・編集したものです)

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  今回も最後までお読みくださり、

      ありがとうございました。感謝!

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