中国で誕生したニューエコノミー分野
の新企業は、今や世界最大規模にまで
急成長している。「スマホ決済」を
媒介に進化を遂げる中国ニュー
ビジネス(配車アプリ、シェ
ア自転車、ドローン、
出前サイト、民泊、
ネット通販…)の最前線を追った。
研究開発費でアップルを
凌ぐ「ファーウェイ」。
通信機器メーカーとして知られている
ファーウェイだが、元々はネット
ワーク機器を電話会社に納め
る業務を主に行っていた。
その後、市場のニーズに合わせて徐々
に業態を変えていき、現在のよう
に携帯電話やスマホなどの
端末を作り始めた。
会社創設時、ファーウェイには社員が
わずか5名しかいなかった。それが
今では18万人のグローバル社員
を擁する巨大企業に成長した。
わずか5人で立ち上げた弱小企業から
18万人の社員を抱える世界的な大企
業にまで育て上げたのは、創業メ
ンバーの1人だった任正非
(レン・ツェンフェイ)である。
1963年、高校を卒業した任は、勉学を
続けるために大学へと進学する。進学
先は、重慶建築工程学院である。
多くの中国人を不幸に陥れた文化大革命
は、任の家族にも不幸をもたらしている。
若いころに国民党系軍需工場で勤務
した経歴があることから、任の父
親が批判にさらされるのだ。
父親が造反組に拘束されたのを知った
任は、大学のある重慶から慌てて
帰郷したことがある。家に
着いたのは深夜だった。
その後、任はすぐに拘束されている父親
のところに向かった。だが、父親は自分
の問題が息子の将来に悪影響を及ぼ
すことを恐れ、任にすぐに学校
に戻れと告げたそうだ。
「ここにいる姿が誰かに目撃されれば、
おまえの将来に影響するだろう。
さっさと大学に帰れ!」。
父親は自分が履いている革靴を脱ぎ、
それを任に与えたという。拘束さ
れた父親には、自分の革靴
以外に息子に与えられ
るものはなかったのだ。
そしてさらに言葉を継いだ。
「知識こそが力だ。他の人が勉強せず
とも、おまえはしっかり勉強しろ。
時の流れに惑わされるな」。
これが逆境に陥っている父親が
任に伝えた言葉だった。
父親が見せた生きるための執念と強靱
な忍耐力は、まだ大学生だった任に
大きな影響を与えることになる。
大学を卒業後、仲間たちと会社を立ち
上げた任は、「何があっても生き残
ること」を会社の最大の使命と
するのである。
さらに、父親が口にした「時の流れ
に惑わされるな」という言葉は、任
の生涯を通じた信念となる。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!