軍の解隊が実行されると、部隊幹部
や兵士たちは各地の政府機関や国
有企業に転属させられた。
しかし、任は軍人出身者だ。当然、
市場経済はもとより、ビジネス
のことをまったく理解していない。
そのため最初の取引で相手にだま
され、200万元もの巨額資金を
回収不能にしてしまう。
仕事を失い、家庭も崩壊─。この時期の
任は人生のどん底を這いつくばっていた。
のちに任は1987年の創業時を
次のように回顧している。
「誰も雇ってくれないので、やむを
得ず起業したんです」。
だが、任の心の中には「何があっても
生き残る」という言葉が刻まれている。
ここであきらめるわけにはいかなか
った。考えなくてはいけないのは、
「どう生きていくか」である。
後年、任は次のように述べている。
「小規模企業の戦略は、『生き延びる』
と『稼ぐ』の2つしかない」。
2001年、ファーウェイの社内誌に
任は「ファーウェイの冬」と
いう文章を掲載する。
この文章の中で任は危機感
を露わにしている。
「10年来、私は毎日、失敗について
ばかり考えてきた。成功は見ても
見なかったことにして、栄誉
や誇りも感じず、むしろ
危機感ばかりを抱いてきた。
だからこそ、ファーウェイは10年間
も生存できたのかもしれない。
どうすれば生き残れるかを皆で一緒
に考えれば、もう少し生き延びる
ことができるかもしれない。
失敗というその日はいつか
必ずやってくる。
我々はそれを迎える心の準備
をしなければならない。
これは私のゆるぎない見方であり、
歴史の法則でもあるのだ」。
これを発表した2001年3月は、
ITバブルの最盛期であった。
だがその直後、任が指摘した
とおり、危機が到来した。
ITバブルが弾けたのである。
このとき、多くのグローバル
企業が経営破綻に陥った。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!