自社開発のカギは、何と言ってもエン
ジニアの才能に負うところが大きい。
任は通信機器分野の優れた人材を
取り込むことを考えた。
創業者の任は43歳でファーウェイを
創設し、一代で世界から一目置か
れる巨大企業に育て上げた。
彼は一貫してマスコミと距離を
置き、もっぱら我が道を行く
ワンマン社長である。
創業から今日までの30年間、任を直接
取材できた記者は1人もいない。
こうしたカリスマ性、神秘性を併せ
持つ任は、すでに73歳だ。
任の後継者については、マスコミ
による憶測が後を絶たない。
私は任の後継者になるのは、彼の
長女で、ファーウェイの常務取
締役兼CFOを務める孟晩舟
(サブリナ・メン)
ではないかと考えている。
1972年生まれの彼女は、母親の
苗字を自分の名前としてきた。
そのため、社内では孟が任の娘で
あることは知られていなかった。
そのため彼女は「潜伏20年」
と言われてきた。
華中科技大学を卒業し、その後、19
92年に中国建設銀行に入行した。
1年後、銀行を辞めるとファー
ウェイで働き始めた。
入社後、電話交換台の係員からスタート
し、秘書、タイピスト、展示会係員な
ど、会社の雑務を担当していった。
そのせいで、まさか創業者の娘だ
とは誰もが想像しなかった。
その後1997年、華中理工大学財務
会計修士課程に入学し、修了する
と、ファーウェイの財務部門
の末端組織の経理担当に配属された。
そこから一歩ずつ昇進し、国際会計部
財務総監、ファーウェイ香港のCFO、
本社財務管理部総裁、販売融資
資金管理部総裁を歴任してきた。
2011年、取締役兼CFOに就任し、20
14年になると現職の常務取締役
兼CFOの職に就いている。
任の長女だと周囲が気付いたのは、
役員になったころからだったという。
長女の孟は任のDNAを受け継ぎ、顧客
ファーストの精神を大切にしている。
例えば、2011年3月11日、東日本
大震災が発生し、これに伴って
福島第一原発事故が起きた。
他の通信機器メーカーが現地から相
次いで撤退する中、ファーウェイ
は現地に残っている。
1週間後、孟は香港から飛行機で日本
にやってきた。機内の乗客は孟を
含めて2人しかいなかった。
そのときのことを孟は次の
ように述べている。
「勇敢とは、危険を恐れないこと
ではなく、信念を持つことだ。
これが勇敢さである」。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!