働くことは多くの喜びをもたらし人生を
豊かにしますが、同時に、
その意義や在り方について不安や悩みを
抱かない人もまたいないでしょう。
SBIホールディングスCEOとして金融業界に
革命を起こしてきた北尾吉孝さんに、「仕事に
悩んだときの対処法」についてお話いただき
ました。
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(北尾)
私のもとには「今の仕事に打ち込めない」
という悩める若者たちが、
しばしば「北尾さん、相談があります」
とやってきます。
彼らの話を聞いて、私はいつもこう言って
います。「あなた、寝食を忘れる
ぐらい仕事に打ち込んでる?
もしそれでもなおかつ今の仕事が嫌だったら、
方法は3つしかないよ」
そして、次の3つの方法を教えます。
1つ目は、その仕事を辞めて、
自分が打ち込めると思う仕事を新たに探すこと。
「あなたが本当にそう決断するなら
私は止めないよ」と言っています。
2つ目は、道楽の世界を持つこと。
趣味の世界でもなんでもかまわないから、
仕事とは違うことをやってみる。
趣味に打ち込んでいると、
そこでいろいろな人とご縁ができます。
たとえば、何か蒐集(しゅうしゅう)する
趣味を持つとすると、
そこに必ず同好の士が集まる世界が存在します。
そういう世界にふれることによって、
良き縁が次から次へと結びついて、
想像もしなかった展開になる場合があります。
そこから新しい世界が開けてくるケースも
あります。それが今の仕事に結びつくのか、
あるいは全く別の人生に
つながっていくのかは別にして、
目先の悩みが消えてしまうこともあるのです。
3つ目は、考え方を変えてみること。これに
ついては、私はよく元首相の吉田茂さんの
逸話を例に出して話しています。
それは吉田茂さんが青雲の志を抱いて
外交官になったばかりのころの話です。
吉田さんが最初に命じられた仕事は
テレックスの伝達係だったそうです。
テレックスが届いたら、
それを大臣のところに持って行くわけです。
それが吉田さんには不満だったのです。
「最高学府を出て
高文試験に通って外務省に入ったのに、
なんでこんなつまらない仕事を
やらなければいけないんだ」
そして、義父にあたる牧野伸顕公に手紙を
書いて、その思いを切々と綴りました。
すると牧野公から返事が戻ってきました。
吉田さんがその手紙を読むと、
こんなことが書いてありました。
「君はなんと馬鹿なことを言っているんだ。
大臣よりも先に国家の重要な情報を
見ることができるのだよ。
それを見て、君はどう判断するのか、
大臣はどう判断しているのか、
その判断の結果はどうなっているのか。
君はまたとない勉強のチャンスを
得ているじゃないか。
こんなありがたいことはないよ」
手紙を読んでいるうちに、吉田さんは
自分が間違っていたことに気づき、
つまらないと思える仕事でも一所懸命に
取り組むように変わっていったのです。
※北尾吉孝氏の著書『何のために働くのか』
(致知出版社)より抜粋
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!