「いつでも核を撃てる」核大国化の一方で当局も
手を焼く不正・賄賂・麻薬。
荒廃する北朝鮮社会と、それでもしたたかに
生きる人々を活写する。
トランプ大統領はいったん自分が考えたとおり
の展開にならないとみるや、強引に相手
を屈服させようともする。
その場合、北朝鮮を待っているのは、これまで
に経験したことのないような強力な経済や軍事
措置を織り交ぜた制裁かもしれない。
別の日本政府関係者は、「別にミサイルで限定
爆撃する必要はない。今の時代、サイバー攻撃
もできるし、USBで外部世界の情報をどん
どん市民に流してもいい。北を混乱に
陥れる手段はいくらでもある」と語る。
韓国の国家情報院は、「世界最強の閉鎖国家」
と呼ばれる北朝鮮を相手に、さまざまな
情報戦を仕掛けている。
無線電波の傍受、偵察機による写真撮影、
スパイによる情報収集などなんでも
ござれの世界。
そのなかの一つが「読唇術」だ。
北では、賄賂もはびこる。
脱北者たちが口をそろえるのは、「カネさえ
あれば、北朝鮮は天国だ」という言葉だ。
情報関係筋によれば、北朝鮮は一人独裁体制を
徹底させるため、日本の皇室制度やタイの王室
制度の資料を取り寄せ、いかに一般大衆の
支持を得られるか、徹底的に研究しているという。
仮に、米軍が北朝鮮攻撃をしたときに問題
になるのが、北朝鮮による報復だ。
北は、米軍による猛爆撃で地域が寸断された
朝鮮戦争の教訓から、全土を細かく区切り、
それぞれが独自に行動できるよう、軍事
施設や食糧貯蔵庫、医療施設などを準備している。
通信網が寸断された場合に備えて、一定の
指揮権限を現地司令官に与えているという。
平壌中心部の金日成広場のそばに、
北朝鮮外務省はある。
北の外交官は、1500人ほどだが、海外に
勤務する外交官は、長期出張者も含めて、
300人ほどに限られる。
本国勤務の外交官たちは、朝8時前
から出勤して夜遅くまで働く。
北朝鮮外務省は、地域担当局には番号が
振られ、北にとって重要な国や地域
ほど若い番号が振られている。
第1局は中国、2局はロシア、3局は東欧と
いった順で、日本担当は14局だ。
第14局のメンバーは約15人。
普段は日本の新聞を読み、情勢分析
を報告するくらいだ。
2012年4月、米軍機がグアム基地と
平壌間を往復した。
そして8月にはやはり同じルートを
米軍機が往復した。
この航空機には、CIAのマイケル・
モレル副長官だった。
モレルは1980年に入局して以来、
33年間をCIAで過ごした。
アジア・太平洋地域の情報分析の経験が
あり、2010年5月に副長官に就任。
長官代行の経験もある大物だった。
極秘のルートでCIA大物の訪朝を
知った日韓は緊張していた。
だが、結果的にオバマ政権は金正恩政権との
間で驚くような成果を上げることなく、
その任期を終えることになった。
日韓政府関係者の一人は、「結局、オバマも何も
得られなかった」と語り、複雑な表情を示した。
それは、米国に出し抜かれなくてよかったという
安堵感と、北から価値のある情報を引き出せなか
ったことへの徒労感が入り交じった表情だった。
接触の顔ぶれは、安倍政権による秘密
接触のスケールを大きく凌駕する。
米国が、安倍政権の秘密接触を強く批判しない
背景の一つには、交渉を前提としない情報機関
同士の接触とはいえ、「自分たちもやって
いる」という思いがあるからだろう。
幼いころの正恩が訪れたこともある日本だが、
北朝鮮に関する人的情報に限っては、米韓
両国に追いつけるだけの実力はまだない。
牧野愛博
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