金正恩を取り巻く女性たちの暮らしぶり、
生き様、権力闘争を研究することに
よって、金王朝の謎が見えてくる。
権力者として台頭する異母姉妹・金雪松と金与正、
第一夫人の李雪主、金正男の母・成蕙琳、金正恩
の母・高英姫、急速に力を失いつつある金敬姫……。
嫉妬、マザコン、不倫、隠し子、淫乱、正妻と妾……
韓流ドラマより刺激的な実話。
核といえば、北朝鮮には核兵器のボタンを押すと
いう決定に関与できる「7人組」という
秘密組織があるという。
そのなかに北朝鮮の最高指導者である金正恩
第一書記一族の女性、3人が含まれている。
北朝鮮情報当局が作成した「北朝鮮の核・ミサイル
関連の意思決定体系」と呼ばれる文書に書かれて
いるもので、3人は金正恩の叔母である金敬姫、
妹の金与正、母親違いの姉、金雪松だった。
他は、軍のトップである総参謀長や、金正恩の
右腕である崔竜海党書記だという。
金正恩の親族の女性が、国の重大決定に
参加しているのは間違いない。
そのカギは、金正恩の行動と思考にある。
彼は部下を粛清したが、妻や妹とは安定
した関係を築いているようだ。
自分しか信じられない絶対権力者でも、
権力欲から比較的遠い女性には
信頼がおけるものだ。
外に向かっては、強圧的なイメージをアピール
する北朝鮮の最高指導者は、じつは自分の
周辺にいる女性たちを頼りにし、重要
な決定にも関与させてきた。
北朝鮮の権力者の周辺で生きてきた女性たちの
存在と役割を、閉鎖されたこの国に重ね合わ
せると、新たな歴史の構図が浮き上がる。
「事件の陰には女あり」という。
粛清、追放、処刑といった国の権力争いには、
やはり女性が何らかの形で絡んでいた。
北朝鮮の権力は女性が支え、歴史を
つくったとも言っていい。
韓流ドラマには、商売の世界で成功を
勝ち取る女性がしばしば描かれる。
北朝鮮でも、無名の名もない女性
たちが危機に強さを見せた。
1990年代の食糧危機のとき、市場で
たくましくモノの売買を行い、家庭
を守ったのはまさに彼女たちだった。
それが北朝鮮の硬直した政治システム
を、事実上の市場経済に変化させて
いく原動力になっている。
女性が主人公として活躍する韓流ドラマの
世界は、北朝鮮では現実として展開している。
パルチザンの歴史。
北朝鮮の歴史の中で、パルチザン活動
は大きな意味を持つ。
パルチザンという言葉は、もともとはフランス語
で、「党員、仲間」を意味する。
女たちの物語は、今も続いている。
現指導者の金正恩を支えているのは、妹の与正、
妻の李雪主、金一家の長女である金雪松たちだ。
彼女たちは、核やミサイル開発といった国防強化
と経済発展を同時に目指している現体制を
支えようとしている。
30歳前に最高指導者の地位についたこの若者
は、タバコや酒を好み、肉が好物だという。
暴飲暴食が彼の若い体をむしばみ、
無謀な行動に出るかもしれない。
その時には、女性が彼の後を継ぐ
可能性がある。
金王朝の女たちを知ることは、北朝鮮
の将来、そして次の指導者を占う上
でも、欠かせない要素なのだ。
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今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。感謝!