端正洒脱な芸風、酒を愛した日常。娘夫婦で
ある池波志乃・中尾彬、弟子たち、寄席の
席亭等これまであまり語られることの
なかった十代目馬生を、様々な角度
から語り尽くす、決定版的評伝です。
多くを語らなかった名人の貴重なエッセイ、
玄人はだしの絵や川柳も収録。弟子である
五街道雲助、十一代目金原亭馬生と著者
による、馬生の主要演目鼎談では、
十代目馬生の芸の幅広さと粋を
体現したその芸風が、細かく
分析され、“最後の江戸落語継承者”とも
言える端麗な高座が蘇るよう。温厚で上品な
人柄を表す写真も巻頭にたっぷり掲載。
また、馬生の亡くなった日の池袋演芸場での
立川談志の高座を、その場にいた柳家喬太郎、
寺脇研が回想し語った話、そして、当の
立川談志が2回のインタビューで重い
口を開いた、鋭くも深い「馬生論」
は、落語ファン必読。滑稽の
極みから人情噺まで、幅広い演目を
ひとりの噺家が演じて、他の追随を許さ
ないという事実に、スタッフ一同、驚きを禁じ
得ませんでした。志ん生とも志ん朝とも異
なる、深い人間理解に基づく語り口は、
聴いたあとに深い余韻を残します。
古今亭志ん生の長男として、昭和3年
に生まれた。
まわりの志ん生への反感から、先輩の噺家仲間
による数々のイジメにあい、人生の辛酸を
嘗め尽くしてもいる。
馬生は、志ん生を父に、志ん朝を弟とし、
江戸の粋を伝えて、早世した。
馬生は、端正洒脱な芸風で、
日常では酒を好んだ。
30代まではあまり注目を浴びなかった。しかし、
昭和44年、新人賞を受賞。多くの弟子を育てた。
絵画をはじめとする古今東西の美術全般、
俳句、舞踊などの素養が豊かであった。
リアリズムや芸術性を志向する噺家に伴いがち
な「自己顕示欲のいやらしさ」が全くなかった。
「落語らしさ」「東京人らしさ」こそが、
十代目馬生の世界である。
速記を読み、録音・録画を視聴するだけでは
理解しえない、直接その高座に接して初めて
魅力と凄さが分かる点では、口承芸能の
典型のような芸の持ち主でもあった。
石井 徹也 (著)『十代目・金原亭馬生』
の詳細及び書籍購入はこちら ⇑
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!