各国が恐れているのは日本の経済力であり「日本円」なのだ 第 2,768 号

 北朝鮮問題は激変した。北朝鮮の核実験と

ミサイル発射、さらには「偽米ドル」事件

の対応に明け暮れる中で、北東アジアの

新しい秩序を話し合うはずだった「六ヵ

国協議」は、いつの間にか「米朝協議」

を軸にまわり始めた。ところが日本

は制裁強化を維持したまま、交渉

は手詰まりになっている。劇的

な変化はなぜ生まれたのか。

 拉致問題はどうなるのか。朝鮮半島をめぐる

資源争奪戦が見え隠れする新たなグレート・

ゲームを、グローバル経済を背景に鮮や

かに読み解く。

 北朝鮮情勢のカギを握るのは、欧州なり。

 地理的にも遠く離れた北朝鮮と欧州。

 両者は一見、無関係のようにも見える。

 少なくとも日本の外務省で、「北朝鮮情勢の

カギを握るのは欧州だ」という認識が持たれ

たことはない、と言ってよいだろう。

 それもそのはず、たとえばドイツにいたっ

ては、わざと「何も知らないふり」を

していた形跡すらあるからだ。

 ドイツは、北朝鮮に食い込んでいる。思えば

ドイツは、長年にわたって北朝鮮と「友邦」

として関係を築いてきた、旧東ドイツを

事実上、吸収合併した国でもある。

そこで培われてきたつながり、

とりわけ経済関係と人的

ネットワークの大半が、

戦略的に統一ドイツへと

継承された可能性は十分にある。

 北朝鮮をめぐる問題とは、結局のところ、

低廉な労働力と豊富な鉱物資源を抱えた、

この国の経済利権の獲得競争なのでは

ないかということだ。根本には、北

の大地に眠る莫大な地下資源があるのだ。

 日本円こそ、問題解決のカギである。

 かつてイギリスは海運業と金融業による

ネットワークをもってポンドを、アメリ

カは技術力やノウハウの比較優位を武

器にした多国籍企業の展開を通じて

つくったネットワークをもって

ドルを、それぞれ国際通貨に

まで成長させることに成功した。

 この観点からいうと、国際通貨形成のための

基礎的ネットワークが、実は日本と朝鮮半島

の間にすでにあることに気づく。

 各国が恐れているのは日本の経済力であり、

その中心にあるのは「日本円」なのだ。そ

して自国内に大量の円が出回っている

からこそ、その脅威を一番肌に感じ

ているのは、北朝鮮なり。

 本書は「素朴な問いかけ」に対する答えを

出すために書いたものである。そして「解

法」としては、その気になれば誰でも

習熟することのできる、公開情報

インテリジェンスを基本として

用いることとした。

 これは端的にいうと、インターネット上などに

流れる世界中からの様々な公開情報を、丹念に

拾い集め、分析することで、ある出来事の

全体像を描き出すという情報分析の手法である。

 その際、基本となるのはあくまでも金融資本

主義の展開、そしてマーケットでの利益獲得

競争である。米国が追い求めているのが、

そこでの覇権の維持と拡張であり、そ

れ以上でも、それ以下でもないこと

から、この視点を抜きにして世界

を語ることはできない。

原田 武夫 (著)『北朝鮮VSアメリカ。

         大国のパワーゲーム』

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  今回も最後までお読みくださり、

      ありがとうございました。感謝!

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