漆芸家で人間国宝の室瀬和美さん。
漆の道を歩んでいく上で最も刺激的な
学びを得たのは、蒔絵の人間国宝・
松田権六さんだったと言います。
───────────────────
室瀬 和美(漆芸家/人間国宝)
───────────────────
──いまでも印象に残っている松田先生
の教えはありますか。
教えは本当にいっぱいありましたけど、
特に私が後進に伝えているのは、もの
をつくる作家として生きていくため
に必要な「三つの学び方」のお話です。
松田先生がおっしゃるには、学び方
には三つの段階があって、まず第一
段階は「人から教わる」ことだと。
学校の先生や先輩、職人であれば
師匠から直接教わる。
そして第二段階は、「ものから教わる」。
だいたいの人が、「先生から学んで、
勉強になりました」で終わってしま
うけれども、実はその教えてくれ
た先生も一世代前の人に教わっ
たことを伝えてくれているわけだから、
せいぜい、三代前くらいの
技術しか教われない。
ただ、例えば漆工芸では、千年前につく
られた作品がいまなお腐らずに残っている。
その千年前の技術や、途中で途絶えて
しまった仕事を教えてくれるのは、人
ではなく、作品そのものがいろいろ
な情報を出してくれるんだよと。
──千年前の作品が教えてくれる。
ただ、「ものから教わる」といっても、
ものが喋ってくれるわけではないです
から、学生の私には全然ピンと
きませんでした。
───────────────────
・人間力ブログ、毎日更新中!
───────────────────
そして、最後の第三段階の学び方
は、「自然から学ぶ」。
人やものから学ぶことは あくまで先人
や既に形あるものから教わることであっ
て、自ら作品を創り出していくこと
には繋がらないと。
要するに松田先生は、木々や風や日光
など、四季折々に変化する自然から
生まれるエネルギーをキャッチし、
それを自分の表現にどう生かし
ていくかが、創作者として
最も大事だと言うんですね。
そして、平安、鎌倉、江戸時代の人も、
それぞれ皆その時代に感じたものを
表現しているのであって、彼ら
の真似をしてもしょうがない。
君はいま生きている時代に感じた
ものを表現するんだと。
───────────────────
◆『致知』には生き方の指針となる言葉がある◆
人間学誌『致知』のお申し込みはこちら
───────────────────
『致知』 2018年1月号
特集「仕事と人生」P46
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!