平均寿命は男性81.25歳、
女性87.32歳とされるいま、
定年後の過ごし方が問われています。
京セラ創業者・稲盛和夫さんは、いずれ
訪れる“新しい旅立ち”に備え、「魂を美しく
磨き上げる」ことを説いてきました。
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(稲盛)
ちょうど60歳になった頃でしたが、
私は一つの思いを抱きました。
私もやがては死を迎える。
その時にどういう準備を
すればいいのだろうかと考え始めたのです。
人は、生まれてから20年ぐらいの時間を
費やして社会に出る準備をします。
そして、40年ぐらいの社会生活を経て、
60歳で定年を迎えます。
それからあと、最近では寿命が延びましたから
80歳まで生きるとすると、
20年という時間が残されています。
その20年は何のためにあるのだろうか、
と私は考えました。
そして、社会に出るための準備期間が
20年必要だったのだから、死を迎える
ためにも20年が必要なのではないか。
つまり、死を迎える準備のために20年という
時間が私に残されているのではないか、
と思ったのです。
しからば、死を迎える準備はどうすればいい
のか。私は、死とは肉体の死ではあっても、
魂の死ではないと思っています。
私の死というのは、
私の魂が新しい旅立ちをしていく
めでたい日だと思うのです。
死は悲しいことではなくて、魂が新しい
旅立ちをしていく嬉しい日なのです。
魂の新しい旅立ちに際して、
私の魂に新しい装いをつけ、
そして明るくあの世へ旅立っていく。
そういうものにするために
魂を美しく磨く必要があるのだと思った瞬間、
私は、これこそが人生を生きる意味
なのではないかと悟りました。
会社を成功させて有名になったり、
お金持ちになったり、そんなことのために
人生があるのではない。
人生を生きる意味とは、
まさに自分の魂を磨くことにある。
死ぬ時に、生まれた時に持ってきた魂より
少しでも美しい魂にして、新しい魂の
旅立ちを迎えるためにある。このことが
人生を生きてきた価値なのではないか、
また目的ではないのかと気がついたのです。
この美しい魂にするとは、
分かりやすく言えば、善き思いを心に抱き、
善きことを実行していくことになります。
魂を磨くためには、毎日毎日、そうありたい
と思って自分が謙虚に反省し、自分自身を変え
ていく努力をしなければいけません。
知識として知っていただけでは、
決して魂は磨けません。
美しい思いやりに満ちた
素晴らしい魂にしていこうと思えば、
毎日毎日、自分にそう言い聞かせながら、
「きょうの自分の思い、きょうの自分の
行動は、果たしておまえが言う善きことに
基づいていたか」
と自分自身に問い詰めながら、
自分の思いと行動を毎日のように修正をして
いかなくてはいけないのではないかと思うのです。
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今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!