営業という仕事は何を売っているかというと信用を売っている 第 2,568 号

東京海上ホールディングス会長の永野毅氏は、
若かりし時、ある大きな試練に直面します。
東海地区で起きた保険金の不払い問題でした。

本来はどうしたらお客様が困らないかを
考えてあげなくてはいけないはずなのに、
ノルマや営業予算など自分勝手な理屈が先に
立ち、商品をいかに売るかという発想になる。

そんな会社全体の意識をどのように変えて
いけばよいのか。「良い会社」づくりのための
永野氏の挑戦が始まります。


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(──「良い会社創り」という方針が永野会長
の中で次第に固まっていったわけですね。

(永野)
はい。強い会社よりも良い会社にしなくては
いけないと強く思いましたね。

百年、二百年続くのは結果であって、その「目的」
はお客様に安心、安全をもたらすことなんです。
そうやってお客様に選ばれる会社になれば、
そこに自ずと利益が生まれて再投資ができる
ようになる。


その循環こそが重要だと考えたんです。
その循環をつくり出すスタートの原動力は
社員一人ひとりのやりがいだと。

(──その思いを東海地区の社員さんに
   伝えられたのですね。)


(永野)

ところが、激戦区で営業をしていた一部の社員
からは「そんな甘い考えで数字が達成できる
わけがないじゃないですか。

朝昼晩、気合いで押しまくるのが営業なんです。
『良い会社』なんてそんなゆるいことを言って
いたら数字はガタガタになってしまいますよ」
と大反発を受けました。

これに対して私は「そうではない。
結果ばかりを追い求めても続かない。
大切なのは社員のマインドセット。責任は
私が取るから、とにかく一回やってみよう」
と答えたんです。

もし、私の社歴が企画畑だけの人間でしたら
さらに反発を食らっていたでしょうが、当時、
私はそこそこ社内では営業で名が通っていました
から、最後は私の話に聴く耳を持って
くれたのだと思います。


それからもやり手と言われる社員とのドンパチは
続きましたが、地道に対話を重ねながら私の
思いを浸透させていきました。


私の経験からしても厳しい営業のノルマを
気合いと根性で乗り切れるのは、せいぜい四年、
五年くらいまで。一方で保険でも車でも
スーパーセールスと呼ばれる人たちは
あまりものを売っていないんですね。
何を売っているかというと信用を売っている

「何かあったらあの人に相談しよう」という
信用や信頼を業績に結びつけている。先ほどから
申し上げている義とは、まさにそれなんですね。

営業という仕事は、数字という目標だけで
引っ張るととても疲れます。だけど、「何の
ためにこの仕事をやっているのか」という
目的で引っ張ると面白いし、やる気が出てきます。

義を追求することが利益に結びついていく。
これは私自身の実感でもあるんです。

※『致知』2022年5月号特集
「挑戦と創造」より

  今回も最後までお読みくださり、

      ありがとうございました。感謝!

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