国家や企業や特定の組織が自分らの利益を最大化するために奪い合う 第 2,032 号

 文明社会を支えるビルや道路、パソコン

の半導体などの原料は、実は砂だ。現在、

地球規模で都市化が進んでおり、すで

に砂の争奪戦が始まっている。にも

かかわらず国際的な条約はなく、

違法採掘が横行。マフィア

が暗躍し、殺人事件まで起きている。

 人間の果てしない欲望と砂資源の今を、

環境問題の第一人者が緊急レポートする。

 100年前には、コンクリートの建物で生活

したり働いたりする人は、世界で数億

人もいなかっただろう。

 今日ではおそらく30億人以上の人びとが

そのような生活を送っていると思われる。

その数は日々増えつづけている。砂は

もっとも見落とされてきた資源だ。

 だが今や、21世紀の最重要の資源の

ひとつとして注目を浴びている。

 これだけ重要な資源であるのにもかか

わらず、砂の採掘、使用、取引を規

制する国際条約は存在しない。

 たとえば、シンガポールは世界最大の砂

の輸入国であり、近隣のアジア諸国から

大量の砂をかき集めて海を埋め立て

て国土を拡大してきた。

 「砂マフィア」と呼ばれ、違法な砂の採掘

や取引を牛耳るヤミ組織が、中国、インド、

インドネシア、ナイジェリアなどで暗躍

している。有力者、役人、警察、軍部

などと結託して、反対する活動家や

ジャーナリストの殺害が多発している。

 砂の多くはかつて無主物として扱われ、

その掘削は大きな利益をもたらした。

 現在、争奪戦が展開されている砂の資源

は、サイエンス誌が指摘するようにまさ

に「コモンズの悲劇」そのものだ。

 国際的なルールもないままに、国家や企業

や特定の組織が自分らの利益を最大化

するために奪い合う。

 この悲劇は他の資源や環境にも広がって

いる。典型的な例は水産資源である。

「早い者勝ち」の論理によって

乱獲に陥りやすく、早い段階

で公的な漁獲規制や資源保護が必要になった。

 知人の漁業者の言葉を借りるなら「海に

浮いている1万円札をオレが拾わねば、

他の者にとられてしまう」ということになる。

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 今回も最後までお読みくださり、

      ありがとうございました。感謝!

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