本来、情報の世界では、軍事と外交は
別個の役割を担う。
言うまでもなく外交情報は外務省の管轄だ。
しかし日本では軍事情報もアメリカから
まず外務省に入る場合が多い。
そして外務省はそのすべてを防衛省に
伝えるわけではない。
縄張り意識と省益主義のなせる業だ。
東アジアの緊張が高まる中、このままでは、
緊急の危機に対応できない。
今こそ、つまらぬ意地とプライドを捨て、
両分野のインテリジェンス組織を正しく
構築しなおすことが急務だ。
二つの情報機関を熟知する著者の緊急提言。
筆者は、1947年生まれ。防衛大学校を卒業
後、陸上自衛隊幹部候補生として入隊。
1993年、連隊長として地下鉄サリン事件
の除染作戦を指揮。
西部方面総監部幕僚長、陸将を歴任、
2005年退官。
またその間の一尉から三佐にかけて外務省
北米局安全保障課(当時)に2年半、在韓国
日本大使館で防衛駐在官として3年間、
勤務した経験がある。
この間に、防衛庁(当時)と外務省のイン
テリジェンスに関する関わり方や、イン
テリジェンスの収集・分析・活用など
を具体的に見る機会を得ました。
情報を制する者は天下を制す。
すべては情報が決する。
情報が命運を左右するのは、桶狭間の
戦いのような局地戦だけではない。
終結や復旧まで何年もかかる戦争や自然
災害など、もっと大きな状況を乗り切る
ためにも、精度の高い情報が不可欠です。
国家や民族のインテリジェンス=「知恵」
のレベルは、軍や外務省など公的な情報
機関の質や量だけで決まるわけではない。
すべての国民が持つ知識や情報が、その社会
におけるインテリジェンスを支えている。
外交インテリジェンスを代表する人物と
しては、アメリカの外交官ジョージ・
ケナンを挙げておく。
その中でもとくに重要な仕事は、
いわゆる「X論文」でしょう。
論文の内容は、長年にわたる観察と研究を
踏まえて書かれた、ソ連という国家に
関する総合的な論考。
彼は西欧文化とロシア文化に対する
深い洞察と・理解をもつ人物。
アメリカの外交戦略家には珍しく、繊細な
感受性と審美眼を備えた古典的な教養人。
彼の論文で提示された情報が理論的根拠と
なって、「封じ込め政策」という冷戦期に
おけるアメリカの基本方針が確立された。
文化や歴史まで含めた幅広い視点で相手
国の現状や将来を分析し、自国の
長期的な政策に活かす。
これこそ、外交インテリジェンスに求め
られる最高レベルの仕事。
ヒューミント(人的な情報収集)の長所は、
人間同士のネットワークを広く深く張り巡
らすことに成功すれば、ほかの情報手段
では窺い知ることのできない「奥の院」
の声が聞けること。
福山隆
『防衛省と外務省:2つの
インテリジェンス組織』
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今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。感謝!