外務省で分析課長、調査課長、そして初代の
情報調査局長を務め、20年以上CIAをはじめ
世界各国の情報機関と接触してきた異色の
経歴をもつ、わが国屈指の外交スペシャリスト。
著者が長年の体験から導き出した情報分析の
原則は一貫している。(1)希望的観測の排
除(いかなる願望も気負いもこだわりも
捨て、客観的事実認識にのみ徹する)、
(2)専門家の意見の尊重(自分の情勢判断を
必ず専門家にぶつけてその意見を聞いてみる)、
(3)一寸先は闇(情勢判断はいかに長く
ても半年たったら同じものを使わない)、
(4)歴史的ビジョン(擬似歴史観に惑わされ
ないだけの見識を持つ)。私は戦略論を論じ
てきたが、煎じ詰めればそれは情報論である。
何か問題があって解決しようと思ったとき、問題
点が全て見えて、整理されていれば、それを解決
する方策は、おのずから道筋が見えてくる。
それが私の戦略論だ。
情報の処理は、まず収集、ついで整理分析、
最後に伝達で終わる。
真っ先に申し上げたいことは、情報事務の
基本は、公開情報の分析能力に
あるということ。
情勢判断において、専門家の意見を尊重す
べし。専門家というのは、特定の地域なら
地域について、土地勘もあり、入手可能
なあらゆる事実と過去の経緯を知って
いる人たちである。
土地勘のある専門家というのは貴重なもの。
一つの国について入手できるあらゆる刊行
物を読み、過去数年の出来事の日誌が頭
に入っていると、おのずから、情勢の
流れの中に目に見えない筋が見えてくるもの。
このことは専門家だけでなく、情報事務の管理
者にとっても同じで、部下の作った要領だけに
頼ることなく、なるべく多くの原典を読んで、
その紙背に徹することが大切。
文化革命を予言し、ソ連のチェコ侵入を予言
したヴィクター・ゾルザは、決して秘密の
情報は読まず、共産圏の公開資料を1日
9時間読んでいました。ですから旅行
すると失われた時間を取り戻すのが
大変だと言って、ほとんど旅行も
せず、今までに本を1冊も書いていない。
国際情勢は「一寸先は闇」ということを
何時も忘れないこと。
歴史的ビジョンを持て。国際政治の原則には
千古不易のものがあるというしっかりとした
歴史観を持っていることが必要だ。「人間
が人間であり、国家が国家である以上」
孫子やマキャベリの言った真理は、
現在でも適用される。
各情報機構のセクショナリズムに捉われ
ない、真に国家的な観点から取り上げ
られ、分析された情報こそが、政策
判断に必要な情報である。
要は情報の多様化を認める寛大さ、柔軟さと、
情報機関の間におけるフェア・プレイ
の精神を確立すること。
岡崎久彦『情報戦略のすべて』
の詳細、amazon購入はこちら⇓
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!