人間学のバイブル『大学』×『書経』。
1月1日に発刊された『致知』には、
その著者である田口佳史氏にご登場いただき、
広島県教育委員会教育長の平川理恵氏と
『大学』をテーマに対談をしてくださいました。
平川氏は、田口氏のもとで
長年、古典を学んできた塾生のお一人。
トップ営業社員、起業家、
民間人校長などの経歴を経て、
現在は広島県にて様々な教育改革の陣頭指揮を
執っておられます。
その実践は『大学』の教えそのものと話す
田口氏と共に、『大学』の教えを
現代にどう生かすかを『致知』で
語り合っていただきました。
その一部をご紹介します。
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[平川]
田口先生はこの度、致知出版社から
『「大学」に学ぶ人間学』
というご本を出版されましたが、
どのような思いをそこに込められたのですか。
[田口]
私がこの本に込めた思いは
とても強いものがあるんですね。
『致知』でも何度かお話ししましたが、
私は映画会社に勤めていた二十五歳の時、
タイのバンコクで水牛を撮影中に
角で突き飛ばされて、
瀕死の重傷を負いました。
「もう駄目かな」と落ち込む中、
ある在留邦人の方が差し入れてくれた
『老子』を読んで救われました。
死んだとしてもそれはそれで意味があると
思っていたのですが、奇跡的な快復を遂げて
自国に辿り着くことができた。
そこで何とか老子にご恩返しを
しなきゃいかんと思って、
何度も老子に問い続けていると、
決まって「今度はおまえが助ける番だ」
という声が伝わってくるんです。
とはいっても、私は身体障碍者になってしまっ
たし、自分にできることは何かと考えて
「『老子』に命を生かしていただいたのなら、
皆さんに『老子』を語れるだけの人間に
ならなくてはいけない」
と思い至りました。その日からですよ。
毎日二時間、古典の典籍を読み続けることを
自分自身に課したのは。
[平川]
五十年以上経ったいまも、
毎日欠かさず続けられているそうですね。
[田口]
はい。それで十年ほど前からでしょうか。
儒家ばかりか仏教、神道など古典の典籍が
「これを説いてほしい」と強く訴えてくるのを
感じるようになりました。
聞き耳を立てて自分を整理すると、
どうやら典籍が一つのことを
言っていることに気づいたのです。
それは要するに宇宙の根源の偉大さと、
その根源と人間との深い関係です。
宇宙の根源について儒家は天、
仏教は仏、道家は道、神道は神という
言葉で説きます。
本日のテーマである『大学』は
五十回以上講義をしてきたと思いますが、
いまようやく分かってきたのは、
宇宙の根源と人間との関わりを
こんなにも単純明快に書いた本は
他にないということです。
それが分かってからというもの、
私は常に感嘆しながら
『大学』の講義をするようになりました。
朱子は『大学』を「孔子の遺言」とまで
言い切っています。
儒家の大山脈があるとしたら、
その最も高い部分を説くのが
『大学』ではないかという実感が、
私の中で日々強まっているのです。
致知出版社の人間力メルマガ
今回も最後までお読みくださり、
ありがとうございました。感謝!