世界で4,000万人もの人々が毎日
服用している「スタチン」。
世界二大死因の元凶に効果があるのみならず、
アルツハイマー病やがんなどにも有効と
目される「奇跡の薬」の開発秘話を研究一筋
に生きる遠藤章さんにお話しいただきました。
────────[今日の注目の人]───
★ スタチン発見への道のり ★
遠藤 章(東京農工大学特別栄誉教授)
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──スタチン発見までの道のりをぜひ
お聞かせください。
当時は抗生物質探しが峠を越していました。
1960年代末までに1,000種類以上もの
抗生物質が発見されていて、その
大半は放線菌という
バクテリアの一種から発見されていました。
要するに、放線菌が当時の研究の
主流だったわけですね。
だけれども、僕は放線菌の中から
コレステロール合成阻害物質を探すのではなく、
カビやキノコといった菌類に絞り込んで、
探索することに決めたんです。
(略)
──研究は何名でスタートされたのですか。
メンバーは研究補助員2名と大卒の
新入社員一名の計4名でした。
もう見つかるか見つからないかっていうのは、
競馬の賭けと同じで(笑)、
いくらやっても見つからないかもしれない。
深みに嵌まると危険なんですね。
そんな中、ある意味で3人を道連れにするわけ
ですから、僕は予め2年間と期限を
決めていました。
そうでなければ、仲間のモチベーションを
維持できないし、所長や会社に迷惑を
かけてしまいますから。
ただ、やるからには
「必ず見つかるに違いない」
「探し方さえ工夫すれば絶対に道は開ける」
という信念を持って、日々研究に打ち
込んでいきました。
試験管にラットの肝臓の酵素と
放射性酢酸を混ぜてコレステロールを合成し、
それにカビやキノコの培養液を加えて
一つひとつ測定する。
その単純作業を地道に延々と繰り返して
いくんです。
──気が遠くなるような作業です。
一株ずつ手当たり次第に試験し、一年間で
約3,000株を調べて運よく有効な菌が一つ
見つかったんです。
結局、モノにならなかったんですけど、
そこで自信がついた。
この調子で探していけば、もっといいものが
見つかるかもしれないと。
そして、6,000株もの実験の果てに、ある
青カビからコレステロール合成阻害物質
「コンパクチン」を発見し、新薬の
種を突き止めることができたんです。
1973年7月のことでした。
小さなことをコツコツ根気よくやり
続けていく。
そういう努力はなかなか表には出ない
けれども、何かを成し遂げる
上で一番大事なことだと実感しましたね。
──2年3か月にわたって6,000株もの
試験を繰り返し、ようやく新薬の
種に辿り着いたわけですが、
途中で心が折れそうになったことは
なかったですか。
もうやめようかなと思ったことも
正直ありましたよ。
だけど、自分が言い出して始めたこと
ですから、そう簡単に白旗を揚げる
わけにはいきませんでした。
まあ、頑固というか、信念というか、
そういうものがなければ、発見には
至らなかったでしょうね。
何とか新薬の種は見つけましたが、
本当の意味で大変だったのは
ここからでした。
──といいますと?
新薬の開発に至るまでには…
※「スタチン」発見にいたるさらなるドラマの
続きとは。
続きは本誌でお楽しみください!
『致知』2016年8月号
特集「思いを伝承する」P12
今回も最後までお読みくださり、ありがとう
ございました。 感謝!