小さなことをコツコツ 根気よくやり続けていく事は大切 第 378号

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 世界で4,000万人もの人々が毎日

服用している「スタチン」。

 世界二大死因の元凶に効果があるのみならず、

アルツハイマー病やがんなどにも有効と

目される「奇跡の薬」の開発秘話を研究一筋

に生きる遠藤章さんにお話しいただきました。

────────[今日の注目の人]───

★ スタチン発見への道のり ★

遠藤 章(東京農工大学特別栄誉教授)

───────────────────

──スタチン発見までの道のりをぜひ

お聞かせください。

 当時は抗生物質探しが峠を越していました。

 1960年代末までに1,000種類以上もの

抗生物質が発見されていて、その

大半は放線菌という

バクテリアの一種から発見されていました。

 要するに、放線菌が当時の研究の

主流だったわけですね。

 だけれども、僕は放線菌の中から

コレステロール合成阻害物質を探すのではなく、

カビやキノコといった菌類に絞り込んで、

探索することに決めたんです。

(略)

──研究は何名でスタートされたのですか。

 メンバーは研究補助員2名と大卒の

新入社員一名の計4名でした。

 もう見つかるか見つからないかっていうのは、

競馬の賭けと同じで(笑)、

いくらやっても見つからないかもしれない。

 深みに嵌まると危険なんですね。

 そんな中、ある意味で3人を道連れにするわけ

ですから、僕は予め2年間と期限を

決めていました。

 そうでなければ、仲間のモチベーションを

維持できないし、所長や会社に迷惑を

かけてしまいますから。

 ただ、やるからには

 「必ず見つかるに違いない」

 「探し方さえ工夫すれば絶対に道は開ける」

という信念を持って、日々研究に打ち

込んでいきました。

 試験管にラットの肝臓の酵素と

放射性酢酸を混ぜてコレステロールを合成し、

それにカビやキノコの培養液を加えて

一つひとつ測定する。

 その単純作業を地道に延々と繰り返して

いくんです。

──気が遠くなるような作業です。

 一株ずつ手当たり次第に試験し、一年間で

約3,000株を調べて運よく有効な菌が一つ

見つかったんです。

 結局、モノにならなかったんですけど、

そこで自信がついた。

 この調子で探していけば、もっといいものが

見つかるかもしれないと。

 そして、6,000株もの実験の果てに、ある

青カビからコレステロール合成阻害物質

「コンパクチン」を発見し、新薬の

種を突き止めることができたんです。

 1973年7月のことでした。

 小さなことをコツコツ根気よくやり

続けていく。

 そういう努力はなかなか表には出ない

けれども、何かを成し遂げる

上で一番大事なことだと実感しましたね。

──2年3か月にわたって6,000株もの

試験を繰り返し、ようやく新薬の

種に辿り着いたわけですが、

途中で心が折れそうになったことは

なかったですか。

 もうやめようかなと思ったことも

正直ありましたよ。

 だけど、自分が言い出して始めたこと

ですから、そう簡単に白旗を揚げる

わけにはいきませんでした。

 まあ、頑固というか、信念というか、

そういうものがなければ、発見には

至らなかったでしょうね。

 何とか新薬の種は見つけましたが、

本当の意味で大変だったのは

ここからでした。

──といいますと?

新薬の開発に至るまでには…

※「スタチン」発見にいたるさらなるドラマの

続きとは。

 続きは本誌でお楽しみください!

 『致知』2016年8月号  

      特集「思いを伝承する」P12

今回も最後までお読みくださり、ありがとう

            ございました。 感謝!

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