常に向上を目指す心意気と軽やかな人生観というものを見習い生きる 第1,079号

 日本人なら誰もが知っている有名な歴史上

の人物五人を取り上げ、彼らの発想力・

創造力の素晴らしさをご紹介します。

 取り上げるのは、能を大成した世阿弥、

武道を極めた宮本武蔵、俳句を創始

した松尾芭蕉、わび茶を完成さ

せた千利休、そして江戸時代

を代表する浮世絵師である

葛飾北斎の五人です。

 彼らはどのようにして、

それを成し遂げたのか。

 その発想のポイントを見ていくことで、

どのように工夫していけば新しい価値

を生み出すことができるのかを学

ぶことができるはずです。

 本当に勉強ができる人は教科

ごとの落差がほとんどない。

 それは、上達の普遍的原理

をつかんでいるからだ。

 そういう人は、会社に入って資格を

取れと言われてもすぐにコツを

つかんで試験に合格する。

 東大の卒業生には、そう

いう人がたくさんいた。

 彼らは会社に入ってからも、どん

どん試験に合格していく。

 上達のコツを掴むには、何か一つでいい

ので、自分が上達した経験のあるもの

を思い起こして上達の記録を書

き起こしてみることだ。

 宮本武蔵の哲学の根本は、「上達の

原理を掴む」ということだ。

 そのためにすべきことは、「よくよく

吟味、工夫、鍛錬する」ことだ。

 発想力は「目の付け所」である。

 松尾芭蕉に学ぶ。

 芭蕉の発想力を一言でいうなら

「目のつけどころ」である。

 「茶の湯」は何を芸術にしたのか。

 茶の湯は、単にお茶を飲む

だけのものではない。

 お客さんを招き入れて、食事をしたり

お茶を飲んだりして語り合い、気持

ちよく帰ってもらう、そのすべ

てが茶の湯なのだ。

 発想とは面白さの発見である。

 千利休と美意識を共有した古田織部。

 江戸時代のクールジャパン。葛飾北斎。

 売れることにこだわった葛飾北斎。

 北斎は、徹底的に売れること

にこだわった人だった。

 90歳にして「もっと

上手くなれたのに」。

 北斎に学ぶべきことは、何にもとら

われず、ただ向上を目指す心意気だ。

 年齢に関係なく、ひたすら技術の向上を

目指した北斎の態度は、高齢化社会

に生きる我々にも示唆に富む。

 死ぬ間際にも、まだ上達を

あきらめていない。

 あと10年、いやあと5年あればちゃんと

した画家になれるのにと、北斎のよう

なレベルの人が言うところに凄みがある。

 北斎のこうした、やりきっているから

こその軽やかな人生観というものも

見習いたいところだ。

 齋藤孝『型破りの発想力:武蔵・

  芭蕉・利休・世阿弥・北斎に学ぶ』

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今回も最後までお読みくださり、

    ありがとうございました。感謝

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